米国債:ターミナルレート引き上げに伴い見通しを修正
2022-06-22
■ FRBはインフレ対応姿勢を強め、利上げペース加速やターミナルレート引き上げを示唆
■ FRBの政策修正を反映し、米国債見通しを修正。年内には長短金利の再逆転が視野に
米消費者物価指数(CPI)上昇ペースの再加速やミシガン大学消費者調査の今後5年間の期待インフレ率の大幅上昇を受けて、米連邦準備理事会(FRB)は金融引き締め姿勢を一段と強めた。14、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.75%の利上げ決定とともに、参加者の政策金利見通しも3月時点から大幅に引き上げられた。先週以降、金利先物市場では将来の金融政策の織り込みが大きく変化し、米国債利回りも全年限で水準を切り上げている。6月3日の本稿では「景気の基調が明確になるまで、米10年国債利回りは3.0%を中心に横ばい推移が続く」と見通していたが*1、米金融引き締めペース加速を受けて、米10年国債利回りは当面3.0%を上回って推移する可能性が高まっており、当時の見通しを修正する。
米国債利回りの上昇圧力が強まったのは、主にFRBが想定する今回の利上げ局面でのターミナルレート(利上げの最終到達点)が大幅に切り上げられた点に起因する。FOMC参加者の政策金利見通しで示されるターミナルレートは3月時点の2.75%から3.75%(いずれも2023年末の中央値)へ引き上げられた。ただし、長期的な政策金利見通しの中央値は2.50%で大きな変化はみられない。また、実質GDP成長率見通しは下方修正されており、2023年にかけて政策金利が中立金利水準を大幅に上回るまで引き上げられる結果、米景気が強く抑制される可能性が高まることが読み取れる。米国債市場では、利回りが大幅上昇すると同時に、2-10年、5-30年などの長短金利差が急速に縮小しており、将来的な景気の急減速を想定した反応が示されている。
修正後の見通しでは、利上げペース加速とターミナルレート引き上げを織り込み、米10年国債利回りは2022年末から2023年初にかけて3%台半ばへの緩やかな上昇を想定する。ただし、上昇基調が強まる訳ではなく、景気の方向性が定まるまで3.0-4.0%を中心とした推移を見込んでいる。景気減速への警戒が一段と強まるため、大幅利上げが続くなかでも米10年国債利回りの上昇は小幅にとどまろう。対照的に、景気減速下でもFRBの大幅な利上げが継続されるため、米2年国債など短中期国債の利回り上昇余地は相対的に大きく、年内には米10年国債との利回りの再逆転が視野に入るだろう。
*1 詳細はPRESTIA Insight 2022.06.03 「米国債:景気基調が明らかとなるまでは横ばい推移か」