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日銀政策会合レビュー:金融緩和継続がもたらすもの

2022-06-21

■ 日銀は現行の金融政策を堅持し、黒田日銀総裁の会見でも、その方針は明確に示された

■ 日銀の金融政策姿勢を巡っては、為替相場の動向に加えて、社債市場の動向にも注視が必要


  本稿では、6月20日に結果が公表された日本銀行(以下、日銀)の金融政策決定会合(以下、政策会合)について整理する。一部の市場参加者は金融政策姿勢の調整を見込む向きもあったが、日銀は現行の金融政策方針を堅持した。なお、会合後に公表された声明では、「金融・為替市場の動向を(中略)十分注視する必要がある」とした点が話題となったが、黒田日銀総裁の記者会見で、その具体的な方策が示されることはなかった。他の主要中銀との金融政策の方向性の違いは一段と明確になり、為替相場では円安地合いの継続が見込まれる。

  為替相場以外で、筆者は今後の日本国債市場を巡る日銀の動向に注目する必要があると考える。足元の日本国債市場は、海外市場からの金利上昇圧力が波及するなか、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策により10年国債利回りが上限0.25%で上昇が抑制され、イールドカーブに歪みが生じている。日銀は4月政策会合以降、原則毎営業日に10年国債の指し値オペを実施している。さらに、国債先物価格の高下を抑えるべく、6月15日より国債先物に対応する受渡最割安(チーペスト)銘柄も、指し値オペの対象銘柄に加えた。

  筆者が懸念するのは、日本国債市場に大きな歪みが生じる結果、社債市場の価格形成機能が損なわれることだ。日本証券業協会によれば、今年4月末時点で国内社債の現存額は約82.7兆円。また、昨年5月からの直近一年間における単月の社債発行額の平均は、約1.2兆円となっている。社債市場は投資家にとって資金運用の場であるが、社債を発行する事業法人にとって資金を調達する市場でもある。日銀が金融緩和を続ける理由の一つに、事業法人の安定した資金調達を支える点がある。日本国債のイールドカーブに歪みが解消されず、仮に今後、社債市場の価格形成機能が大きく損なわれた場合、日銀が金融緩和を継続することが、むしろ事業法人にとって不利益となる状況も想定される。

  事業法人の資金調達が円滑に実行されなくなれば、巡り巡って日本経済の活力を削ぐことにもなりかねない。足元では日銀の金融緩和と円安の関係にばかり焦点が当たっているが、社債市場の動向からも、日銀の金融政策姿勢を読み解いていく必要があろう。今すぐ国内債券市場の環境が大きく悪化するとは想定していないが、注視は必要と考える。
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