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米国株:金利上昇に伴う一段の株安リスクがくすぶる

2022-06-20

■ FRBはインフレ抑制姿勢を一段と強め、利上げペースを加速

■ 米国株は米長期金利動向に神経質に反応しやすく、一段安を警戒したい


   5月の米消費者物価指数でインフレ基調の根強さが示され、インフレがピークアウトしたとの市場の思惑が否定されたほか、6月のミシガン大消費者信頼感指数ではインフレが消費者心理を強く圧迫している様子が示された。また、ミシガン大調査の5年先の予想物価上昇率がこれまで3.0%前後で安定していたところから3.3%に切り上がり、2008年6月以来の高水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)の政策が後手に回りインフレを制御できないとの見方が強まり、金融政策への信頼が損なわれることを避けるため、14、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げペースを速め、FOMCメンバーの政策金利見通しが大幅に引き上げられた。この先も物価関連指標が上振れ、インフレ期待のアンカーが外れるとFRBが危機感を強めた場合、インフレ抑制に向けた金融引き締めが加速し、米国債利回りには一段の上昇圧力がかかる可能性もある。
   S&P500の向こう1年予想株価収益率(PER)は16日時点で15.4倍と、2012年以降の平均値(16.9倍)を下回り、新型コロナ禍前のレンジ(14-18倍)まで低下してきており、水準調整が一巡しつつあるようにみえる。しかし、益回りスプレッド(S&P500益回り-米10年国債利回り)は3.18%と、3月15、16日のFOMCで金融引き締めが開始されて以降、割高感が意識されやすい3%前後での推移が続いている。また、予想PERと強い逆相関の関係にある米実質金利(米10年物価連動債)は今週に入りプラス0.9%付近まで上昇する動きをみせている。株価は再び米長期金利の動向に神経質に反応しやすい地合いとなっており、PERの調整による株価の一段安を警戒する必要がある。向こう1年一株当たり利益(EPS)を現状維持とし、予想PERが前述レンジ下限である14倍まで低下すると仮定すれば、S&P500の下限はおおよそ3400ポイントと試算される。
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