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中国経済:経済活動再開に伴い景気回復へ

2022-06-16

■ 中国では、経済活動制限の段階的解除に伴って、5月の経済指標は総じて4月から改善

■ 繰延需要、挽回生産、政策支援により、短期的には力強い景気回復が期待される


本日、中国の主要経済指標が発表され、5月分の経済指標が概ね出揃った。鉱工業生産(前年比0.7%増、前月比5.61%増)、小売売上高(前年比6.7%減、前月比0.05%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来前年比6.2%増、前月比0.72%増)はいずれも前月比で増加に転じた。輸出(前年比16.9%増)、輸入(同4.1%増)など、すでに公表されている経済指標を含めて、大半の指標が4月から改善を示している。また、PMI(政府公表値)は、製造業(49.6、前月比2.2ポイント上昇)、非製造業(47.8、同5.9ポイント上昇)ともに事業活動の拡大・縮小の基準となる50を3カ月連続で下回っているが、4月からは上昇し、企業活動収縮の勢いが弱まりつつあることを示唆する。上海市での都市封鎖が続くなかでも、生産など一部の活動は段階的に解除され、経済活動再開が徐々に進んでいることがうかがえる。なお、英民間機関の調査によると、上海港でのコンテナ船などの平均滞船時間は、4月末をピークとして6月上旬に2019-21年の同時期の平均値付近まで縮小し、港湾の混雑は緩和している模様。防疫を目的とした高速道路の封鎖も5月中に解除され、トラック輸送など陸運の正常化も進んでいる。上海港での積み残しコンテナが完全に解消するには時間を要するものの、制限解除とともに物流網は正常化しつつある。

政府、中央銀行は急激に悪化した景気の下支えに向けて政策支援を強めている。5月20日には、住宅販売の促進に向けて、住宅ローン金利などの基準となる期間5年の最優遇貸出金利(LPR)が5カ月ぶりに引き下げられた。また、5月23日には、減税・税還付拡大(1400億元)、鉄道建設債発行・長期融資促進(3000億元)、航空業界向け緊急融資および債券発行(3500億元)など、6分野33項目で構成される包括的な経済政策パッケージが発表された。

上海市、北京市などで行動制限が大幅に緩和され、6月は外出制限期間中に繰り延べられてきた消費の拡大や、納期遅延の挽回に向けた増産の動きが強まることが想定される。新型コロナウイルス感染再拡大による規制強化は懸念されるものの、民間部門の経済活動再開、政策的な景気下支えにより、当面の中国経済は、比較的力強く回復することが見込まれる。
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