MPCプレビュー:困難な状況に直面する英中銀
2022-06-15
■ 6月MPCでは5会合連続の利上げが実施され、政策金利は1.25%となる見込み
■ 政府・与党から利上げ継続を望む声が出る一方、スタグフレーションリスクの高まりは看過できず
本稿では、6月16日開催の英金融政策委員会(MPC)を巡る動向について整理する。市場予想では、英中銀(BOE)は今回のMPCで25bpsの追加利上げを実施と見込まれる。実現すれば5会合連続での利上げとなり、政策金利は1.25%になる。
前回の5月MPC以降、物価上昇圧力を抑制するため、主要先進国の中央銀行(日本を除く)は金融引き締め姿勢を一段と強めている。欧州圏だけでも、欧州中銀(ECB)は6月理事会で7月と9月の連続利上げ方針を示したほか、4月28日にゼロ金利政策を解除したスウェーデン中銀は、副総裁が次回の政策決定会合で50bpsの利上げ実施を排除しない旨を表明した。また、昨年9月以降に3回の利上げを実施済のノルウェー中銀は、来年末までに政策金利が2.5%になるとの予想を示し、長らくマイナス金利政策を実施中のスイス中銀も、早ければ6月16日の政策決定会合で利上げ実施との見方が急浮上している。
こうしたなか、短期金融市場ではBOEが今年の年末にかけて、政策金利を少なくとも2.75%まで引き上げるとの予想が織り込まれている。5月18日公表の英消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年比9.0%と1982年以来の高水準を記録。スナク英財務相は「BOEが物価抑制に向け決定的な行動を取る」と期待を示すほか、与党の一部から利上げのタイミングが遅すぎるとの批判が多い。BOEは、6月MPC以降も利上げ継続が求められるだろう。
一方で、ベイリーBOE総裁をはじめ、5月MPC以降に伝わる複数のBOE高官の発言を踏まえると、インフレリスク長期化の恐れとともに、過度な金融引き締めが景気後退につながるとの懸念が目立ってきた。経済指標では、5月20日に公表された5月消費者信頼感指数は、1974年の調査開始以降で最低を記録した。また、6月13日公表の4月月次GDPでは、前月比0.3%減と2カ月連続で予想外の減少となり、景気減速懸念が強まっている。さらに、本日6月14日には2-4月の雇用統計、MPC後の同22日には5月CPIが、公表を控える。スタグフレーションリスクの高まりが、BOEの金融引き締め姿勢に影響を及ぼすかもしれない。BOEはすでに2023年にマイナス成長へ陥るとの予想を示すが、景気後退を避けたい意向は根強い。今年8月には保有国債売却の方針が示される予定だが、慎重姿勢の継続が見込まれる。