米国:金融引き締め加速への思惑が一段と強まる
2022-06-14
■ インフレが高止まりし、消費者心理が悪化する構図が鮮明に
■ インフレ期待が切り上がり、今後の推移を注視したい
5月の米消費者物価上昇率は、食品・エネルギーを除くコア指数が前年比6.0%と前月(同6.2%)から伸びが鈍化したものの、市場予想(同5.9%)を上回ったほか、前月比では0.6%と前月と同水準の伸びを維持し、インフレ基調の根強さを示す結果となった。コア指数のうち、財・サービスいずれも同0.6%と高い伸びを維持し、新車・中古車、家賃・帰属家賃などが押し上げ要因となり、物価上昇の裾野の広さも改めて確認された。また、総合指数は前年比8.6%と前月及び市場予想(いずれも同8.3%)を上回った。前月比では1.0%と前月(同0.3%)から伸びが加速し、市場予想(同0.7%)を上振れた。コア指数の高い伸びに加え、エネルギー(前月比3.9%)、食品(同1.2%)も伸びを高めており、インフレがピークアウトしたとの思惑を否定する結果となった。一方、6月のミシガン大消費者信頼感指数は50.2と市場予想(58.0)を大幅に下回り、1952年の統計開始以降の最低を更新。現況指数も過去最低を更新、期待指数は1980年5月以来の低水準となり、インフレが消費者心理を圧迫すると同時に、景気の先行き不透明感が高まっていることが示された。
ニューヨーク連銀による最新の4月時点の消費者調査では、3年後の予想物価上昇率は3.9%と、昨年10月(4.2%)より低い水準にある。また、10日時点の米ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.78%、5年先5年インフレスワップは2.74%と、それぞれ4月に付けた直近高値(それぞれ3.04%、2.85%)には届いていない。こうしたなか、先週末に発表されたミシガン大調査によれば、これまで3.0%前後で安定していた5年先の予想物価上昇率が3.3%に切り上がり、2008年6月以来の高水準を付けた。インフレ期待は全体としては高水準ながら安定的に推移していると判断されるが、基調が上向きに変化した兆候の可能性も否定しきれない。万が一、米連邦準備理事会(FRB)がインフレを制御できないとの見方が大勢となれば、1970年代のように賃金と物価が相互に影響しつつ上昇していくリスクが高まる。こうした事態になることを未然に防ぐためにも、FRBが金融引き締めを一段と強める可能性があり、引き続きインフレ期待の推移を十分に注視していく必要があろう。