News

2022年6月第3週目(13日~17日)の相場展望

2022-06-13

欧州ECB理事会でラガルド総裁は、来月の次回理事会において0.25%の利上げを開始すると明言し、資産購入プログラムの量的緩和を7月1日で終了する意向を示した。9月の理事会でも再び利上げをする方向で考えているとし、今後のインフレ見通し次第では0.25%より利上げ幅を拡大するとコメントしている。EUは、ロシアのウクライナ侵攻で利上げが遅れ、インフレ抑制に疑念が出ていたがそれを払しょくさせるかのように予定通りのインフレ退治に向かうことになる。利上げを既に開始した英国や米国の利上げ開始時期が遅すぎたとする専門家の意見も多く、それらの意見等を考慮してか、ECBは利上げを開始することに決定した。その他の国々も利上げ方向で一致しているが日本は未だ金融緩和の真っただ中であり、その差が134円突破のドル円相場に反映している。

先週金曜日に発表された米国の消費者物価指数では、前回辺りから期待されていたインフレ率のピークアウト期待を裏切った形の結果となり、株価の大幅な下げに繋がった。5月の消費者物価指数は、前月比1%、年率で8.6%に達し予想を上回ったことが懸念材料となった。また米国金利、特に短期金利の上昇が長期金利との差が縮小しており、長期金利逆転発生のリスク=スタグフレーション懸念も再度台頭してきた。市場では来週のFOMCで予想の0.5%ではなく0.75%まで引き上げるのではという憶測も出始めている。

<米国消費者物価指数の内容詳細>
●食品とエネルギー関連を除くコアCPIは前年比+6.02% 市場予想通りとなって4月の6.16%からも低下。39年7ヵ月ぶり高水準となった3月(6.47)をピークに2ヵ月連続の低下、1月(6.02)以来、4ヵ月ぶりの低水準。
●食品とエネルギーを除く商品価格が前年比+8.5%となって3ヵ月連続の伸び率鈍化で7ヵ月ぶり低水準となった以外は上昇。
●エネルギー関連を除くサービス価格は前年比+5.2%で9ヵ月連続の上昇。食品価格は+10.1%で12ヵ月連続の上昇。エネルギー 関連価格は前年比+34.6%で3ヵ月連続30%超の高止まり。
●ガソリン価格が前年比+48.7%。3ヵ月連続40%台で、航空運賃も前年比+37.8%で7ヵ月連続上昇、中古車価格も+16.1%と3ヵ月連続の低下でも依然高水準。
●実質賃金上昇率は前年比-3.34%。4月の-2.80%から一段と低下し、昨年4月(-3.53)以来13ヵ月ぶりの低水準。 価格は上昇、物価高を除いた実質賃金は低下しており、スタグフレーション懸念が大きくなってくるだけに今後のFRB運営に目が離せない状況。物価高に加えてミシガン大学消費者信頼感指数は急低下の50ポイント(予想58ポイント)となり、景況感の悪化が強まっている。

ドル指数はおおきく上昇し前回高値に接近しており、ドル円は135円台に迫り、ユーロドルは大きく下落した。ユーロドルは5月半ばから反発を開始し、2週間ほどで約400ポイント強上昇したが、先週のECB理事会後のラガルド総裁の記者会見からユーロドルは下落に転じた。その間の下落で直近高値からの61.8%戻しを達成しており、最安値更新(1.0347)も視野に入ってきた。今回にも利上げの期待がややあったことで5月から上昇に転じており、ロングポジション解消の売りが出たようだ。日足チャートでは一目均衡表の雲の下限付近まで上昇していたので、そのまま上方向に動けば堅調さを維持可能だと思っていたところ、雲に跳ね返されている。こうなると雲の下限が大きな抵抗ラインとして機能するだろう。欧州ではこれまで主要であったロシア産の原油や天然ガスの調達を停止したため、その他の国々と比較しては天然ガスの調達コストが大きく上昇しており、それに伴う企業活動や一般家庭の電気料金の支出高に直面している。それらが経済活動へ悪影響を与え、インフレにも直面しているため、スタグフレーションの波は比較的大きいと考える。そのスタグフレーション懸念の大きさが、ユーロへの売り圧力ともなっているようだ。利上げを大きく進めれば景気腰折れ懸念、利上げを怠ればインフレ率の上昇となっている。米国の経済指標と比較すると欧州では失業者数の増加、信頼感指数など景況感の悪化と小売りや消費の減退が見られており、米国以上に景気低下懸念が拡大していることがユーロドルの低下に繋がっているようだ。今回の下げで直近安値を下回ると2016年安値(1.0339)まで抵抗が見当たらないことで、再度パリティ価格への思惑が浮上し下げ加速の展開も想定する必要があり、1.0339を下抜けすれば一気にパリティ価格割れの可能性が高まってくる。

ユーロドル1時間チャート


今週は注目のFOMCが開催される。予定通り0.5%の利上げとなれば一時的に株価は回復するだろうが、その後のパウエル総裁の記者会見でのコメント次第では乱高下する可能性が残る。経済統計からは、米国は小売売上、ニューヨーク連銀製造業景気指数、NAHB住宅価格指数や卸売物価指数の発表を控える。欧州ではドイツとユーロ圏でのZEW景況感指数やフランスで消費者物価指数などの発表があり、欧米での結果がユーロドル相場へ影響してきそうだ。また英国や日本でも金融政策決定会合があり、特に円安が一気に進んでいるため黒田総裁の記者会見は要注意であろう。
TOP