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ドル円:直近の急上昇は、円安主導でもたらされた

2022-06-10

■ 直近のドル円上昇は円安主導の展開と捉えており、政府・日銀の行動次第で急反落のリスクも

■ FRBが一段と金融引き締め姿勢を強めた場合、2002年高値(135円15銭)超えがみえてくる


   本稿では、騰勢を強めるドル円相場の状況を整理する。ドル円は5月に米金利低下に歩調を合わせる形で5月安値(24日、126円35銭)まで調整が進んだが、同30日以降に上昇を再開。6月6日には5月高値(9日、131円34銭)を上抜け、本稿執筆時点で134円55銭まで上値を伸ばしている。2002年2月以来の水準を日々更新しており、堅調な地合いは続く見込み。
    5月30日以降のドル円急上昇は、円安主導の展開と捉えている。具体的には、日本銀行の金融緩和姿勢が相対的に強まったと市場で解釈され、円安地合いが継続している。5月31日に公表された5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率は、前年比ベースで過去最高を更新し、市場での欧州中銀(ECB)の利上げペースは9月までに計75bpsが織り込まれた。また、6月1日にカナダ中銀(BOC)が、同7日に豪中銀(RBA)が、インフレ抑制のために、それぞれ50bpsの利上げを決定した。この間、黒田日銀総裁は「揺るぎない姿勢で金融緩和を続ける」と再三表明している。昨年から続く円安基調は「金融政策の方向性の違い」が長らく大きな要因とみてきたが、ここへきて予想以上に焦点が当たっている。

   一方、米ドル高要因は、さほど直近のドル円上昇に影響していないと捉えている。例えば、米2年国債利回りは2.8%近辺への上昇にとどまるなど、米国債市場での米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース織り込みは、5月上旬時点の水準に戻っていない。今後、米ドル高要因が一段と強まるかは、物価動向を含む先行きの米景気の状況次第となろう。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)は、四半期に一度公表される経済・金融政策見通しにも注目したい。

    以上から、ドル円が次の上値メドとされる2002年1月高値(135円15銭)を明確に上抜けるかは、米連邦準備理事会(FRB)が一段と金融引き締め姿勢を強めるか、あるいは日銀が金融緩和姿勢を堅持するかがポイントとなる見込み。6月14、15日はFOMC、6月16、17日は日銀金融政策決定会合を控え、注目度は高い。特に、円安要因が足元のドル円急上昇をけん引しているだけに、リスクシナリオとして日本政府と日銀が円買い介入や金融政策の方向転換を示唆した場合、ドル円が一時的に急反落する可能性は頭に入れておくべきだろう。その場合、5月高値から同安値までの下げ幅(約5円)を超える調整となるのではないか。

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