ユーロ上昇の持続性
2022-06-08
■ ユーロ圏の経常収支は約10年ぶりの赤字
■ 経常収支の赤字化とスタグフレーションリスクがユーロの重しに
今朝のアジア市場で、ユーロ円は141円台後半へ上伸し2015年1月以来のユーロ高・円安水準を更新している。一方、ユーロドルは5月安値1.03ドル半ばで切り返したが、1.08ドル台には届かず1.06ドル台後半へ押し戻される展開。欧州中銀(ECB)も金融引き締めを急ぎ、7月の利上げ開始や9月末までのマイナス金利終了を巡る思惑による金利先高観は一定の支えとなっているが、ユーロの下値不安は残る。
3月のユーロ圏経常収支は15.7億ユーロの赤字と前月(157.3億ユーロの黒字)から大幅に悪化した。単月での経常赤字は2012年2月以来。財の貿易収支が赤字に転じたほか、第一次所得収支の黒字幅縮小や第二次所得収支の赤字幅拡大が響いた。経常収支は3月までの1年間で219億ユーロの黒字(GDP比1.8%)を維持したが、前年同月(294億ユーロ、同2.6%)から黒字幅は縮小。エネルギー価格高騰によって、財の貿易赤字拡大が続けば、経常収支の赤字が単月にとどまらず長期化するとの懸念が強まる。
6月9日のECB理事会では政策金利は据え置きの公算。同時に公表されるスタッフによる経済見通しで実質GDP成長率は下方修正、消費者物価指数上昇率が上方修正されれば、スタグフレーションリスクは一段と高まる。円安やポンド安が強まるなかで、対ドルのユーロは下げ渋りの印象が強い。ユーロは日足一目均衡表の基準線1.0567ドルでサポートされても、週足ペースの同1.0922ドルや節目の1.10ドルで上値の抵抗を受けるとみている。