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米国:5月雇用統計の評価

2022-06-07

■ 5月の米雇用統計は労働市場の堅調さを示唆

■ 小売など一部で調整の兆しも、労働需給は緩和しにくいと思われる


       5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比39.0万人増と前月(同43.6万人増)からは減速したものの、市場予想(同32.5万人増)は上回った。雇用統計より前に公表された5月の米ISM製造業景況感指数の雇用指数や同ADP雇用統計などでは労働市場に変調の兆しが現れたと受け止められたが、雇用統計がこうした見方を払拭した格好となった。一方、平均時給は前年比5.2%増と市場予想と一致し、インフレ加速を示唆する内容ではないものの、高い伸びが続いていると解釈され、米国債市場では売り買いが交錯した。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制のために9月以降も現在のペースで利上げを続けるとの見方が再び優勢となり、米国債利回りを下支えしている。

      NFPでは、サービス業の伸びが鈍化(前月比33.6万人増⇒同27.4万人増)しており、小売が同6.1万人減少、うち総合小売が同3.3万人減少したことが響いた。大手小売企業などは高インフレで企業利益が圧迫されているほか、一部で過剰雇用が見られると報告している。求人件数が高水準にあることから労働需要は依然として旺盛で、労働市場全体としては堅調との評価を変える必要はないものの、小売など一部では調整を進め始めた様子が読み取れる。また、25歳から54歳までのプライムエイジと呼ばれる働き盛り層の労働参加率は80.0%と、新型コロナ禍前の水準(2020年2月、80.5%)に接近しており、この先は大幅な改善を見込みにくい。一方、55歳以上の労働参加率は37.8%と今年に入り横ばい推移となっており、新型コロナ禍前の水準(2020年2月、39.3%)には依然として距離がある。今後は55歳以上の労働参加率が上昇に向かわない限り、労働需給が緩和しにくい状況が続き、インフレ圧力の長期化につながる可能性があるだろう。
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