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2022年6月第2週目(6日~10日)の相場展望

2022-06-06

市場の懸念材料となっていた米国での経済指標の悪化度合いがやや緩んできた。先週発表された、米国供給管理協会ISMの5月製造業指数は56.1と前月から上昇した。中身を見ると、受注と在庫のバランスは未だ悪化傾向となっているが、やや数値が改善されている。徐々にバランスが好転する兆しも見て取れ、在庫減少と受注の堅調さを取り戻すことになると米国経済にもやや明るさが見えてくる。ただ今後利上げが数回行われることで、住宅への投資は減少していくと思われる。住宅関連消費の減少を他の消費が補うことが出来るのか、それもインフレの動向次第であるが、最低でも1年は掛かるとされる現在の物価高基調であるため、在庫減らしで企業の利益率改善と膨れ上がった国民の貯蓄率の低下が相殺することが出来るのかが焦点となりそうだ。インフレはロシアとウクライナの戦いが終了となれば、市場はインフレ率低下を予想してリスクオンとなっていくだろうが、それも未だ不透明だ。新型コロナ感染数と重症率の度合いが徐々に低下していくことは、工場やロジスティックスのフル稼働で貿易量の回復とスピードアップに繋がり、電子部品などの生産が増えてくれば物価上昇懸念も収まってくる。今月に入り上海のロックダウンが緩和されたことで、中国国内の部品生産も徐々に回復すると思われる。その読みが日経平均の堅調さに影響しているようだ。

米国株は戻りを見ているが、日本株の方が比較的に堅調地合いは継続中だ。円安は善悪両方あるという見方であるが、株価にとっては割合の多い輸出企業には利益の伸びに繋がるのは間違いなく、生産調整を余儀なくされても前年度の利益は余裕で確保すると思われ上昇のサポート役となるはずだ。企業もやっと重い腰を上げて、流石に値段の引き上げに動き出した。国民は貯蓄が十分あるので物価が上がっても問題ないのだが、問題は将来への不安であるため、不安感を緩和させる政府の十分な施策が必要となる。来月の参議院選挙もあり、与党は更なる政策を打ってくるはずで国内株は好転の兆しが見えるだろう。

米国のバイデン大統領は、今月中にも米国と双璧の産油国であるサウジアラビアに訪問をする。その前に石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は2日のオンライン閣僚級会合で、7月と8月の原油供給拡大ペースを加速させることで合意した。ウクライナに侵攻したロシアに石油カルテルでの中心的地位を引き続き認める一方、増産を求める米国にも協調姿勢を示した。OPEC主要産油国は総じて昨年より原油供給を毎月40万バレル程度拡大しているが、原油価格の上昇を止められていない。これ以上の高騰で市場が逼迫する前に緩和しようという姿勢が表れた。ロシア産の原油が世界に供給されない分を供給の余裕が大きいサウジアラビアが補填する見通しが出てきた。バイデン大統領とサウジアラビアとの会談内容次第となるが、ある程度のお土産も必要であろう。バイデン大統領は自身の中間選挙前にアジア諸国と中東を巻き込んで世論で訴える方向であろう。

金曜日の米国雇用統計では、失業率が3.6%で予想通り、非農業部門雇用者数は予想の32.5万人に対して39万人と予想以上に増加した。平均時給はほぼ予想通りであった。この結果を受けて、米国の金利が若干上昇しドルは買われた。ドル円は130円後半まで伸び、3週間ぶりの高値まで達した。ドル高とは言え、予想を大幅に上回ったわけではなく、若干の伸び程度だったがドル高、株安となっておりリスクオフの展開となってにもかかわらず、クロス円が上昇したことに注目したい。それは対ドル通貨の下げ以上にドル円の上げが大きかった結果であった。ドル円はここ1か月程度の調整で126円台を底に値を回復しており、日足の一目均衡表雲上限に届かず反発し、現在は130円台後半で推移しており直近の高値である131.34まで目前に迫っている。日本サイドからは日銀や政府のスタンスやコメントは相変わらず曖昧な表現で終始しており、全般では現在のレベルを容認していると思われる。ではどのレベルまで容認なのか?上昇スピード次第でレベルは関係ないのか?と市場が問いただしている上昇に思える。インフレ懸念が高まる中で静かに円安が進むことで政府や日銀関係者のコメントや方向性が変わってくるのかを試す動きはこれから本番となるのであろうか。5月後半に行われた調査では岸田内閣の支持率は発足後最高の61・5%と上向きで、現在の円安レベル容認を国民が受け入れている形と捉えられる。また日銀の黒田東彦総裁は3日、参院予算委員会で、家計の所得が伸び悩む中での物価上昇は実質所得の減少を通じて経済の下押し要因になると指摘し「金融緩和によって賃金の上昇しやすいマクロ経済環境を作り出すことが重要だ」とコメントし、金融緩和継続の意思に変化は見られない。ドル円の高値131円台はここ10年以上経験がないレベルであり、次の高値目途として130円台では2002年1月の135.18という当時の高値しかなく、その手前に抵抗レベルはほぼ無い様子。直近高値を更新すると値が軽くなる可能性が高まる。高値更新後はやや加速する可能性もあって、一時間足の一目均衡表の雲を下回らないことを前提にロングで攻めたいところである。

ドル円日足チャート


ドル円一時間チャート


今週は日本で日経平均先物オプションのメジャーSQを控えて日経平均の変動率が高まりやすく、4月まで大きく下がったところでプットオプションの建玉が増えているため、上昇すると急ぎの買戻しやロールオーバーの動きが顕著になると予想されることで短期的な上昇の可能性もある。ただ米国株は短期買戻しが一旦収まりつつあり、インフレ懸念の高まりによっての金利上昇で再度下落に転じる可能性もあり一筋縄ではいかない難儀な相場つきとなろう。ユーロ圏とオーストラリアでは政策金利が決定され、日本では1-3月期のGDP、ユーロ圏でも同期のGDPの発表がある。その中ではECBのラガルド総裁定例記者会見に注目が集まる。米国では、5月消費者物価指数の結果が出る予定で、金曜日であるが相場変動には気を付けたい。
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