カナダ中銀プレビュー:利上げ姿勢は継続の見込み
2022-06-01
■ 市場予想ではBOCは2会合連続の50bps利上げを実施し、政策金利は1.50%となる見込み
■ 中立金利(2-3%)へ向けた利上げ姿勢は鮮明であり、今後は物価と景気動向がカギとなろう
本稿では、6月1日に開催されるカナダ中央銀行(以下、BOC)の金融政策決定会合へ向けた動向を整理する。市場予想では、BOCは今回の政策会合で政策金利を、従来の1.00%から1.50%へ引き上げると見込まれている。予想通りならば2会合連続の50bps利上げとなる。
BOC幹部の発言を踏まえると、積極的な利上げ姿勢はすでに明確と言えよう。マックレムBOC総裁は、4月下旬に行われた議会証言で「6月の政策会合で50bpsの追加利上げを検討する可能性が高い」と述べた。カナダ経済は現時点で「過熱」しており、国内にインフレ圧力を生じさせているとの認識を示し、インフレ抑制姿勢を鮮明にしている。また、5月上旬にはロジャースBOC上級副総裁も、「カナダ経済が過熱し始めた今、需要が供給を大幅に上回ることを放置できない」とし、「政策金利はなお低水準であり、追加利上げの必要がある」と主張。加えて、グラベルBOC副総裁も政策金利を一段と引き上げる必要性に言及した。
BOCが警戒を示す物価指標について、5月18日に公表された4月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は、前年比6.8%と前月分(同6.7%)から一段と伸びが加速している。これで、BOCの物価目標水準(同2-3%)を13カ月連続で上回ったことになる。1991年1月につけた同6.9%に迫る水準であるが、金融市場ではさらに伸びが加速するとの見通しが広がる。
そこで注目されるのが、今後の政策金利見通しの引き上げペースとなる。本稿執筆時点でカナダの短期金融市場では、政策金利が今年の年末時点で2.75%まで引き上げられるとの見方が織り込まれている。しかしながら、BOCは前回の4月会合時点で「中立金利(2-3%)水準をやや上回る水準へ、一定期間引き上げる必要もある」と指摘しており、今後の物価動向次第で金利の上振れ余地が残る。一方、5月26日にカナダ統計局が公表した3月の平均賃金(週次)は前年比4.30%上昇と、物価の伸びに追いついていない。そのため、物価上昇圧力が高止まりした場合、いずれ個人消費の減速懸念浮上も想定される。まずは足元の景気動向を確認するうえで、5月31日に公表される1-3月期の実質GDPにも注目しておきたい。