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米国株:投資家の景気悪化懸念は行き過ぎか

2022-05-30

■ 経済指標の悪化が投資家心理を圧迫

■ 株価は景気後退に近い状態を織り込み、景気悪化を過度に懸念している状態か


インフレや金利上昇の影響を受けて、住宅関連統計や企業景況感、消費者信頼感などの経済指標の悪化が目立っている。経済指標の予想値と実績値の乖離を指数化したエコノミックサプライズ指数は69.9(4月19日時点)まで上昇していたが、その後急低下し、足元ではマイナス41.5(5月26日時点)となっている。経済指標が事前予想を下回るケースが多くなり、景気減速懸念が投資家心理を悪化させていることが想定されるが、株式市場はどの程度の米景気悪化を織り込んでいるのだろうか。S&P500の前年比騰落率はISM製造業景況感指数との相関が知られ、足元のS&P500(前年比3.4%下落)はISM製造業景況感指数の50割れを示唆する水準にある。これは、投資家が製造業活動の縮小を想定しているうえ、GDPの拡大・縮小の境目(48.7)に接近すると懸念していることが示唆される。

しかしながら、実際の経済活動はそこまで悪化していない。ニューヨーク連銀が公表している週次経済活動指数(WEI)は、日次や週次で入手可能な消費者活動、労働市場、生産動向などの10の指標を指数化して算出され、その時点での実質GDP成長率を示すように調整されている。これまで実質GDPの前年比成長率に近い動きを示してきたWEIの13週移動平均は20日時点で4.63と、緩やかな低下基調を辿っていることは確かだが、米景気が底堅く推移しているとの見方を維持できよう。現時点では、投資家が米景気悪化を過度に懸念している状態にあると判断され、目先の株価は経済指標の結果に一喜一憂しつつ不安定な値動きになると想定している。

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