南アフリカ中銀:短期的には利上げ姿勢の継続を予想
2022-05-20
■ 南アフリカでスタグフレーションリスクが高まった場合、南ア中銀の政策姿勢へ与える影響に注目
本稿では、5月19日に開催される南アフリカ中央銀行(以下、南ア中銀)の金融政策決定会合へ向けた動向を整理する。市場予想では、南ア中銀は今回の政策会合で主要政策金利のレポレートを、従来の4.25%から4.75%へ引き上げると見込まれている。予想通りならば利上げは4会合連続となるが、1回の利上げ幅が50bpsとなれば2016年1月以来となる。
短期的には、引き続き物価動向が南ア中銀の金融政策姿勢に影響を与えよう。5月18日に公表された4月の南ア消費者物価指数(CPI)の上昇率は、前年比ベースで総合が5.9%、コア指数(食品、エネルギーなどを除く)は3.9%と、前月(5.9%、3.8%)と概ね同水準となった。南ア中銀の目標レンジ(同3-6%)内に収まっているほか、3月に南ア中銀が修正した今年の物価上昇率見通し(前年比5.8%)近辺にとどまっている。今回、南ア中銀が再び物価上昇率見通しを上方修正した場合、金融市場では一段の追加利上げ観測が広がることになりそうだ。すでに世界銀行は、今年4月時点で高い失業率(2021年10-12月期:35.3%)や財政への高負担などがランド安を招き、さらなるインフレがもたらされるとの警戒感を示している。
一方で、今後の南アフリカ経済を巡っては、(1)南東部2州での洪水被害や(2)計画停電の動向が注目される見込み。(1)は、洪水被害に伴い「国家的災害事態」宣言が4月18日に発表された。特にクワズル・ナタール州政府は、インフラなどに数十億ランド相当の被害が出たと推計しているほか、同州にある南ア最大の貿易港(ダーバン港)の一時操業停止などが、南アフリカ経済へ打撃を与えよう。(2)は2020年8月以降、国営電力会社が設備老朽化などを理由に断続的に実施しているが、今年4月20日までは一時的に「ステージ4」(最大は「ステージ8」)まで深刻化していた。これも、南アフリカ経済へ打撃を与える要因となる。
今年4月に更新された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(WEO)で、南アフリカの実質GDP成長率の伸び率は、2022年が前年比1.9%、2023年が同1.4%と、2021年(同4.9%)から鈍化する見通しが示された。今後、上記(1)(2)の動向次第では、南アフリカでのスタグフレーションリスクが高まりうる。その場合、中期的な観点で南ア中銀の政策姿勢に変化が起きるか、注視しておきたい。