中国経済:2020年と異なる世界への波及
2022-05-19
■ 中国は、コロナ禍以降最も深刻な景気減速に直面している
■ 海外でも、供給網の混乱が増幅され、景気抑制と同時にインフレ圧力を強めることになろう
16日に中国の主要経済指標が発表され、4月分の経済指標が概ね出揃った。鉱工業生産(前年比2.9%減、前月比7.08%減)、小売売上高(前年比11.1%減、前月比0.69%減)、固定資産投資(農村部除く、年初来前年比6.8%増、前月比0.82%減)は総じて前月から悪化し、生産、消費、投資などの経済活動は3月から一段と停滞感を強めたことが明らかとなった。前月比をみると、3月は都市部での活動制限の影響が消費動向に強く表れ、小売売上高が大幅に減少したが、4月は鉱工業生産、固定資産投資の減少が目立っている。工場閉鎖に加え、中国最大の貿易港である上海港での貨物処理の遅延によって部材調達が滞り、自動車、集積回路などの生産が大幅に減少した。輸出(前年比3.9%増)も前年比ながら3月から増勢が大幅に鈍化しており、4月以降、生産、投資、輸出などの企業活動が急激に収縮していることがうかがえる。上海市での都市封鎖の延長、北京市での防疫強化など、主要都市で活動制限が一段と厳格化され、コロナ禍以降、最も深刻な景気減速に陥っている。16日、上海市は都市封鎖を段階的に解除し6月中の全面解除を目指す方針を示したが、すでに上海港湾周辺ではコンテナ船の滞船が拡大している模様で、物流の正常化はさらに遅れるとみられる。
中国経済収縮の影響は今後世界にも波及することが見込まれる。湖北省武漢市で都市封鎖が行われた2020年は2月に中国経済が急激に収縮し、3、4月に海外で景気が急減速した。当時は、海外でも厳格な都市封鎖が導入されたため、海外需要が急減少し、一部の医療製品を除けば急激な物価高騰は生じなかった。今回は海外での経済活動制限の大半は解除されているため、中国製品の供給減少は世界的な供給網の混乱を増幅させ、製品需給の逼迫につながろう。景気抑制と同時にインフレ圧力が強まることが想定され、大規模な金融緩和によって早期V字回復を実現した2020年と異なり、金融引き締めが一段と促される可能性が高い。すでに兆候がみられているスタグフレーション(景気停滞とインフレの同時発生)が今後さらに強まることになり、この影響を和らげるような政策余地が乏しい点が懸念される。