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米金融機関の融資基準は緩和度合いが大きく後退

2022-05-18

■ 米金融機関は融資環境の悪化に対する警戒感を強めている

■ 企業業績の先行き不透明感が強まることを示唆

米連邦準備理事会(FRB)は5月9日に、最新のシニア・ローン・オフィサー・サーベイを公表した。これはFRBが米金融機関に対して3カ月前と比較した融資基準や資金需要などの変化について四半期ごとに聞き取り調査を行うもので、調査対象となる金融機関は3月28日に調査票を受け取り、4月8日までに回答した。これによれば、大・中企業(年間売上高5千万ドル以上)向け融資基準DI(全回答に占める厳格化の割合-緩和の割合)はマイナス1.5と、5回調査連続で緩和超の領域を維持したものの、前回1月調査(マイナス14.5.)から緩和度合いは大きく後退し、プラス圏(厳格化超過)が視野に入った。一部の米大手金融機関が1-3月期決算発表を受けて、インフレ高止まりと金融引き締め継続に伴う景気悪化シナリオの可能性を若干高め、貸倒引当金の積み増しを実行した動きと整合的となっている。また、融資需要DI(全回答に占める需要増加の割合-需要減少の割合)は12.3と前回1月調査(21.7)から低下し、2020年10月調査から続いてきた需要の改善方向への動きが反転した。

なお、融資基準DIは設備投資や鉱工業生産、新規雇用の先行指標として有効に機能してきたほか、企業の営業利益率に対して概ね3四半期の先行性が確認されている。大手ハイテク企業の1-3月期決算では、インフレの加速や供給制約の強まりから、足元の売上高の伸び悩みと売上高見通しの不透明感が目に付いた。金融情報会社リフィニティブの集計(5月13日時点)によれば、4-6月期の一株当たり利益(EPS)成長率は前年比5.7%増と4月初め時点(同6.8%増)から下方修正されてきているほか、エネルギーセクターを除くと同1.1%減と予想されている。原材料価格の上昇や人件費の増加が企業の利益率を圧迫するとの懸念がくすぶるなか、企業業績の先行き不透明感が株価の重しとなる懸念が強まっている。
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