メキシコ中銀:さらなる利上げが見込まれる
2022-05-17
■ 年初に浮上していたメキシコ中銀の独立性を巡る懸念は、今のところ後退している
5月12日、メキシコ中央銀行は政策決定会合を開催し、市場予想通りに政策金利を50bps引き上げて7.00%とした。これで利上げは8会合連続。そのうち、1回の利上げ幅を50bpsとしたのは、昨年12月以降で4会合連続となっている。過去2回の会合では全会一致で決定されていたが、今回は政策委員5人のうち1人の委員が75bpsの利上げを提案した。また、メキシコ中銀は声明で、「インフレ、およびインフレ期待を取り巻く環境が複雑化しているため、目標達成に向け一段と強力な措置が検討される可能性がある」とし、追加利上げを示唆した。
5月9日に公表された4月のメキシコ消費者物価指数(CPI)上昇率は、総合指数が前年比7.68%、食品とエネルギーを除くコア指数が同7.22%と、14カ月連続で中銀の目標レンジ(同2-4%)を上回った。こうしたなかでメキシコ中銀は、2023年1-3月期にかけて四半期ごとのCPI上昇率(総合指数とコア指数)の見通しを、0.5%から0.9%の幅で上方修正した。インフレ圧力の高止まりが金融引き締め姿勢を後押ししていることを、明確に打ち出したと言えよう。景気を巡る状況では、1-3月期のメキシコ実質GDP(速報値)が、前期比0.9%増と3四半期ぶりのプラス成長となったものの、利上げ継続の悪影響もあり回復は鈍い状況にある。同国のロペスオブラドール大統領は「連鎖的な物価高騰は世界的現象」としたうえで、「利上げは少ない方が、より良い」との見解を発表している。今年1月に就任したロドリゲス中銀総裁は、大統領の市長時代に登用された人物でもある。ただし、現時点では前中銀総裁が開始した利上げサイクルを引き継いでおり、メキシコ中銀の独立性を巡る懸念は後退している。
5月12日には、同じ中南米のペルー中央銀行も、政策金利を2009年4月以来の高水準となる5.00%へ引き上げた。また、5月11日にはマレーシア国立銀行(中央銀行)が市場予想に反して、政策金利を過去最低の1.75%から2.00%へ引き上げた。直近では、物価上昇圧力の強まりを背景に新興国での金融引き締めの流れは根強い。市場の一部では、メキシコもこの流れに追随して、年末にかけて8.50%まで一段と利上げが進むと見込まれている。