米国:CPIの結果はFRBの利上げ方針を追認
2022-05-13
■ FRBの利上げ方針を追認する結果だが、政策調整の必要が生じれば再び疑心暗鬼が広がろう
今後の米金融引き締めペースを見極めるうえで注目されていた4月の米消費者物価指数(CPI)では、食品・エネルギーを除くコアCPI(前年比6.2%上昇、前月比0.6%上昇)が前月比で3カ月ぶりに上昇ペースが加速した。エネルギー除くサービス(前月比0.7%上昇)が4カ月連続で上昇し、エネルギー以外にもインフレが広がっていることが確認された。ただ、前年比では8カ月ぶりに上昇ペースが鈍化し、4月以降、前年のベース効果*1が一巡することを踏まえると、来月以降も鈍化傾向は続くことが見込まれる。短期的な変動を均し、前年比よりも機敏に趨勢的な動きを反映する3カ月平均の3カ月前比(年率換算6.0%上昇)も2カ月連続で上昇ペースが鈍化している。以上を踏まえると、前月比でインフレの裾野が広がり、高インフレの長期化懸念を払拭する内容とは言い難いものの、前年比では徐々にインフレのピークアウトが明らかになろう。米連邦準備理事会(FRB)が0.75%へ利上げペースを加速させる必要性を必ずしも高める内容ではなく、5月3、4日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエルFRB議長が示した0.50%の利上げが継続される公算が大きくなったと考えられる。
ただし、インフレのピークアウトは金融引き締めの手綱が緩められることを示す訳ではない。パウエルFRB議長は今後2回のFOMC(6月、7月)で0.50%利上げを継続することを明言し、経済に対して中立的な金融政策へ迅速に移行する方針を掲げる。外部環境の不確実性が高まり、先行きを見通し難くなるなか、2会合先までの政策方針を具体的に示すのは異例であり、景気減速を容認してインフレ抑制を優先する姿勢を明確にしている。金融引き締めに着手したことに伴い、金融緩和継続のために掲げてきたフォワードガイダンスが失われたため、当面の引き締め方針を明示し、金融市場で広がる疑心暗鬼を払拭する意図もうかがえる。
この指針は0.50%利上げの継続によってインフレが鎮静化に向かうことを前提としており、有効性は今後の物価動向に左右される。昨日発表の米CPIの結果は、FRBの主張を追認する格好となった。インフレ加速や景気急減速により政策調整の必要性が高まれば、ガイダンスの信頼性が低下し、金融市場で再び疑心暗鬼が広がることが想定されるため、金融引き締めを予告通りに進めるのは緩和時以上に難しい。引き締めが進むにつれて、FRBのコミュニケーションの重要性が一段と増すことになるだろう。
*1 2020年の都市封鎖に伴い、2020年4月以降、物価が大幅に下押しされ、2021年4月からは前年の低水準を基準に高い物価上昇率が続いた。2022年4月以降は、この効果が計算上、完全に剥落する。