米国株:PER低下の主因を探る
2022-05-12
■ 市場のEPS見通しが悲観に傾けば、株価の下落余地が一段と広がる可能性も
先週末までに米主要企業の1-3月期決算が概ね出揃った。情報会社リフィニティブの集計によれば、S&P500株価指数構成企業のうち434社が決算発表を終え、79%の企業が事前予想を上回る一株あたり利益(EPS)を発表。金利上昇やインフレの業績への影響は個別企業やセクターごとにまちまちとなっているものの、EPS成長率は前年比10.4%と、4月初め時点の予想(同6.4%増)を上振れる見通しとなっており、全体としては堅調な結果と評価できる。また通年では、2022年が8.8%、2023年が10.0%と、4月初めの予想(それぞれ8.8%、10.0%)から大きな変化はない。一方で、S&P500の向こう1年予想PERは昨年末(21.7倍)から17.9倍まで低下している。足元の株価下落の主因は株価収益率(PER)の水準調整にあり、金融引き締め加速への思惑により引き起こされたと解釈できる。
しかし、PERの水準調整の背景には、EPSの下方修正に対する警戒感の高まりがあるとみることもできる。大手ハイテク企業の1-3月期決算では、インフレの加速や供給制約の強まりから、足元の売上高の伸び悩みと売上高見通しの不透明感が目に付いた。一部企業のプレアナウンスメントによれば、4-6月期のEPSに関して、48社が悪化もしくは市場見通しを下回るとの見方、20社が改善もしくは市場見通しを上回るとの見方を示しており、各企業が想定するEPSの先行きは1-3月期(それぞれ32社、14社)より一段と慎重化している模様だ。4-6月期のEPS成長率は前年比5.6%増と4月初め時点(同6.8%増)から下方修正されてきているほか、エネルギーセクターを除くと同0.9%減と予想されている。
米連邦準備理事会(FRB)は景気後退を回避しつつ、インフレ抑制に成功するソフトランディングシナリオに自信を示しているが、これに対する市場の評価は依然として定まっていない。市場のEPS見通しが悲観に傾けば、株価には一段の下落余地があるとみられ、警戒したい。