ブラジル中銀:利上げサイクル終了が近づく
2022-05-10
■ 物価上昇圧力が鈍化し、一足先に利上げサイクルが終了すれば、ブラジルの注目度が高まろう
本稿では、5月4日に開催されたブラジル中央銀行(以下、BCB)による金融政策委員会(以下、COPOM)の結果を整理する。BCBは5月COPOMで1.00%幅の利上げを決定し、政策金利を12.75%とした。利上げ実施は10会合連続で、政策金利は約5年ぶりの高水準に達した。
金融市場の一部では、ブラジル中銀の利上げサイクルが6月COPOMまでで終了するとの観測も浮上している。3月25日にカンポス・ネト中銀総裁は、「現在進めている金融引き締めは、政策金利を12.75%に引き上げた段階で終了する公算が大きい」との見方を示していた。3月の消費者物価指数(IPCA)上昇率は前年比11.30%へ加速し、2003年以降で最大の伸びとなるなど、依然インフレ高進への警戒は根強い。ただ、本稿執筆時点では、「政策金利(12.75%)-物価上昇率(11.30%)」で示される実質金利は、+1.45%とプラス圏を維持している。次回4月のIPCA発表は5月11日だが、市場予想(同12.04%)に反して物価上昇の伸びが鈍化する結果となれば、昨年3月に始まったBCBの利上げサイクルが近く終了するとの観測が強まると予想する。なお、5月COPOM終了後、匿名ではあるがブラジル財務省高官による「今後大幅な追加利上げがあるとは思わない」との発言も報道されている。
BCBは5月COPOM後に公表した声明で、「次回(6月)会合について、より小幅な調整で利上げサイクルが延長される可能性がある」としたが、これまで記載されていたインフレリスクに関する「上向きの非対称性」という、インフレ高進への警戒を示す文言を削除した。今のところ、6月COPOMで0.50%幅の追加利上げを見込む市場参加者が多数を占める。
5月に入っても、新興国ではコロンビア・インド(緊急利上げ)・チリ・チェコ・ポーランドで利上げが実施され、利上げの動きが加速している。そうしたなか、ブラジルが一足早く利上げサイクル終了となれば、新興国のなかでの注目度は一段と高まりそうだ。4月総合PMIは58.5と11カ月連続で好不況の境目となる50超を記録するなど、サービス業が主導し、足元のブラジル景気は利上げによる悪影響が比較的抑えられている。加えて、4月貿易収支も81.48億ドルの黒字と、資源価格上昇を背景に2021年6月以来の高水準となっている。