新興国株式:1-3月期は「資源国優位」が明確に
2022-04-22
■ 資源・農産物価格の上昇が南米にとってプラスで作用した一方、政治リスクには注意が必要
本稿では、新興国株式市場の2022年1-3月期の動向を整理する。MSCI指数(米ドル建て)で確認すると、年初来の株価騰落率(データは全て3月31日時点)は先進国がマイナス5.5%、新興国がマイナス7.3%と、ともに下落。今年に入って世界的に金融引き締めへの警戒感が株価の重しとなったうえ、2月下旬からはロシア軍がウクライナへ本格的に侵攻したことで、資源・農産物価格の上昇や西側諸国による対ロシア経済金融制裁の発動などが、投資家心理の悪化につながった。
全体的には不調だった新興国株でも、地域別では好不調が明確に分かれている。今後は一層、選別投資が重要となりそうだ。中国株の不調などを受けてアジア地域はマイナス8.9%と軟調な展開となった一方、南米地域は+26.1%と前年の不調を取り戻す形で上昇した。12カ月先一株当たり予想利益(EPS)をみても、南米地域は+27.4%と、良好な企業業績の裏付けに基づく株価上昇と言える。主要国の株価指数(現地通貨建て)でみても、ブラジル(+14.5%)・チリ(+14.6%)・ペルー(+18.0%)・コロンビア(+14.5%)と、南米地域は概ね好調だった。なお、欧州新興国はマイナス71.3%と記録的な下げとなっているが、MSCIは3月2日をもって、欧州新興国株指数を含む主要指数から、ロシア株を除外している。
南米地域の好調の主な景は、(1)資源・農産物価格の上昇がプラスに寄与した点と、(2)ウクライナ情勢など地政学リスクから距離がある点が挙げられよう。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、「鉱物・金属資源」の輸出額ベース(2020年時点)では、上位10カ国にブラジル、チリ、ペルーの3カ国が入る。また、「農産物」では大豆や小麦の輸出シェアが高いブラジルの存在感が大きい。すでにブラジルの小麦輸出量は1-3月期だけで昨年一年間を上回り、同じく小麦の輸出大国であるウクライナの輸出減少による影響が及んでいる。
ただし、2022年は順調にみえる南米地域だが、政治リスクには注意が必要と考える。ブラジルでは今年11月に大統領選を控えており、ルラ元大統領が現職のボルソナロ大統領を破るとの見方が広がる。また、約20年ぶりのインフレ高進への抗議により、ペルーでは一時首都で外出禁止令が発出されるなど、食料品価格上昇が政情不安につながる恐れもある。