ポンドの強弱感
2022-04-21
■ ロシアのウクライナ侵攻と中国の都市封鎖を背景に、世界経済は減速する見通し
■ 英国は主要7カ国のなかで物価高止まりと景気減速が目立つ、ポンド高は一巡へ
19日、国際通貨基金(IMF)は世界経済見通し(WEO)を公表。ウクライナでの戦争を主因に世界の経済成長率は2021年(6.1%、推計)から減速、2022年と2023年はいずれも3.6%と1月予測からそれぞれ0.8ポイント、0.2ポイント下方修正した。ロシアについては、欧州各国による経済制裁やロシア産エネルギーの輸入削減を決定が重しとなり、それぞれマイナス8.5%、同2.3%と大幅な落ち込みを見込む。戦争の経済的打撃は低所得国を中心に広範囲に伝播していくと指摘している。また、コロナ禍後に異例の措置が導入されたことで、政策は景気下支えに効果を発揮したが、家計・企業の債務は急増。景気支援策の解消にあたり、今後の金融・財政引き締めに注意を払うよう警鐘を鳴らしている。21日はIMF主催のセミナーイベントに、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長とラガルド欧州中銀(ECB)総裁がパネリストで参加することから、発言が注目される。
主要7カ国(米、日、独、仏、伊、英、加)のうち、物価の高止まりが懸念されるのは英国だ。WEOによれば、消費者物価(CPI、ユーロ圏はHICP)は2022年にピークに達した後、2023年には日本を除く大半の国で3%を下回る水準に伸びが鈍化する(米・独:2.9%、日:0.8%)。だが、英国は5.3%と英中銀(BOE)の物価目標(2%)を大幅に上振れる状況が続く見通し。インフレ対応による金利上昇を背景に生活費は高騰、投資は低迷。2023年の成長率予測は1.2%と、2022年(3.7%)から減速のうえ、仏(1.4%)・伊(1.7%)を下回る低成長が見込まれる。3月のCPI上昇率は前年比5.7%へ加速しており、BOEは5月5日の金融政策委員会で4会合連続の25bps利上げを決定、政策金利は1.0%に引き上げられる公算が大きい。さらに、11月までの4会合でも計100bpsの追加利上げによって、2.0%へ引き上がると市場は見込む。直近で、ポンド円は168円台前半まで急伸、2016年2月以来のポンド高・円安を付け、2015年6月以降の下落幅(195円86銭-124円10銭)の61.8%戻し168円45銭にほぼ一致しているが、英実質金利がマイナスであることに鑑みれば、ポンド高は一巡するとみている。