中国経済:「ゼロコロナ」政策により減速感が強まる
2022-04-19
■ 4月は一段と減速感が強まり、供給網の混乱などを通じて、世界経済への波及も見込まれる
本日、中国の主要経済指標が発表され、3月分の経済指標が概ね出揃った。
1-3月期の実質GDP成長率(前年比プラス4.8%)は4四半期ぶりに成長ペースは加速したものの、中国政府が設定する2022年の成長率目標である「5.5%前後」を下回った。北京五輪開催、新型コロナウイルス市中感染抑制に向けて期間中の経済活動が制限され、回復ペースが鈍い状況が続いている。3月の主要経済指標は、鉱工業生産(同5.0%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来同9.3%増)は増勢が大幅に鈍化し、小売売上高(同3.5%減)は前年の水準を下回った。深圳市、上海市などの主要都市や吉林省などの製造拠点で厳格な都市封鎖が実施され、生産、消費、投資などの経済活動が総じて落ち込んだ。既に公表されている3月のPMI(製造業:49.5、非製造業:48.4)は、製造業、非製造業ともに事業活動の拡大・縮小の基準となる50を下回った。3月の貿易統計も、輸出(同14.7%増)が高い伸びを保った反面、輸入(同0.1%減)は2020年8月以来の前年割れとなり、内需低迷が顕著となっている。金融統計をみると、マネタリーベース(同9.9%増)を中心に、マネーサプライ(M2、同9.7%増)、社会融資総量残高(同10.6%増)の増勢が加速した。中国人民銀行(PBOC)が流動性供給を拡大していることがうかがえるが、3月時点では景気下支え効果は限られている。中国国務院は13日に預金準備率引き下げなどの政策手段を適切に実施して経済を支援する方針を示し、PBOCは15日に預金準備率引き下げを発表した。「5.5%前後」の成長率目標の達成には年後半の高成長が求められ、追加景気支援策への期待は引き続き強い。
深圳市など一部では都市封鎖が解除され、上海市で一部制限が緩和されるなど、経済活動再開を模索する動きがみられる一方で、経済活動制限の対象地域は拡大が続いている。ロシアへの経済制裁、原燃料価格高騰の影響も加わり、4月は景気停滞感が一段と強まることが見込まれる。世界有数の貿易港である上海港での物流停滞、半導体工場の稼働率低下など、中国の「ゼロコロナ」政策の影響は今後海外にも波及することが想定される。ロシアへの経済制裁と合わせて、世界経済にとっての大きなリスクとなりつつある。