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過去と様相が異なる利上げ局面へ(2)

2022-04-14

■ 今回の米金融引き締めでは、初回利上げ直後の段階で利上げサイクル終盤の様相を示している

■ 足元の米景気は堅調だが、景気後退の先行シグナルである逆イールドが生じた


1990年以降、5回目の米利上げ局面である今回の金融引き締めでは、過去4度とは幾つかの相違点がみられる*1。米連邦準備理事会(FRB)は、インフレ抑制に向けてできる限り早く政策金利を景気に対する中立水準まで引き上げるとともに、必要ならば中立水準を上回るまで引き締めを継続する方針を掲げている。漸進的ではなく急進的な金融引き締めが志向されているため、景気が急減速に向かう可能性は過去の利上げ局面よりも高いと考えられる。

米国債市場では、金融引き締めへの政策転換当初からこのような懸念が示されてきた*2。昨年10月より、超長期年限で残存期間の短い利回りが長い利回りを上回る現象が生じ始め、FRBの金融引き締め観測が強まるにつれ中期、長期年限へ歪みが広がっている。一時、経験則的に景気後退の先行シグナルとして注目される米2年、10年国債利回りの逆転(逆イールド)も生じた。通常、金融引き締めにより景気減速が明確となる利上げサイクル終盤に現れるこの現象が初回利上げ直後に観測されたことは、景気の早期失速に対する警戒感が強いことを示唆する。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示された参加者の政策金利見通しで、現在より2年程度先の2023、2024年末の政策金利(中央値)が長期均衡水準を上回っているため、逆イールド発生はこれに準ずる反応と解釈することも可能だが、見通し公表以前から、米国債市場で他の年限間も含めて長短金利差縮小が進行してきた点は軽視できないだろう。

逆イールドは将来の景気後退を示すのか、にわかに議論が活発化している。現時点では、早期警戒シグナルの1つが点灯したに過ぎず、筆者は、むしろ他の景気先行指標などでその蓋然性の推移を適宜判断していく姿勢が賢明だと考えている。その1つとして注目している米消費者信頼感指数の現況指数をみると、昨冬以降、米2-10年国債利回り差が急速に縮小するなかでも、3月の最新データでは8カ月ぶりの高水準へ上昇し、米経済のけん引役である個人消費は好調であることがうかがえる。過去30年以上に渡って米2-10年国債利回り差と高い連動性を示しており、現況指数のピークアウトも逆イールドと同様に景気後退の前兆となってきた。現時点でピークアウトは観測されていないが、外部環境の不透明感が増すなか、低下基調が明確となる場合は景気後退の蓋然性が高まると考えられる。

*1 詳細はPRESTIA Insight 2022.03.28「過去と様相が異なる利上げ局面へ(1)」
*2 筆者はPRESTIA Insight Market Alert 2021.11.11「米金利は新たな「謎」を投げ掛ける」などで指摘してきた

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