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ECB理事会プレビュー:結論は6月理事会へ先送りか

2022-04-13

■ 3月ECB理事会の議事要旨などから、金融市場では年内のマイナス金利脱却まで織り込まれた

■ ユーロ圏経済を取り巻く不透明感は高く、金融政策を巡るECB内の議論は先送りされよう


4月14日に欧州中銀(ECB)理事会が開催される。市場予想では現行の金融政策が維持される見込みだが、ECBの金融政策正常化を巡る姿勢が一段と積極的になるかが市場の注目を集めよう。4月7日に公表された3月ECB理事会の議事要旨では、ECB内で徐々に「インフレ高進に対応すべき」と考える当局者が増えていることが示された。事実、3月理事会では通常の資産購入プログラム(APP)の終了期日を、今年7-9月期へ前倒しする方針が決定されていた。そのうえ、一部当局者は今年6月までにAPPを終了させ、同7-9月期の利上げ開始を想定するまで、踏み込んだ議論がなされたことも示されている。

そうしたなか、本稿執筆時点の欧州短期金融市場では、年内に預金ファシリティ-金利がマイナス0.50%からプラス圏へ引き上げられるとの見方が織り込まれた。また、ドイツ(独)10年国債利回りは0.8%台まで急上昇し、2018年2月以来の水準に達している。3月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は、前年比7.5%上昇と過去最高を更新。加えて、ウクライナでの戦闘が鎮静化する兆しがなく、ユーロ圏の物価上振れリスクは高まりやすい状況にあることが、ECBの早期利上げ観測につながり、欧州債券市場での金利上昇圧力を高めている。

直近のECB高官発言を確認すると、執行部のレーン、パネッタ両専務理事は、「短期的な物価上昇ばかりに目を奪われるべきでない」との見解で一致している。対して、シュナーベル専務理事は金融政策正常化の推進を支持しており、執行部内だけでも見解の相違がみられる。各国中銀総裁の間では、オランダ・ベルギー・独・オーストリアなど中部欧州は金融引き締めに積極的な一方、ギリシャ・イタリア・スペインなど周縁国は消極的な姿勢を崩していない。

以上の通り、ECB内では金融政策を巡る議論が活発化しているが、スタグフレーション(物価上昇・景気減速)懸念やウクライナ情勢を巡る不透明感がくすぶるなかでは決め手に欠け、4月理事会で議論が集約される可能性は低いとみている。APPの具体的な終了期日などの決定は、ECBの経済見通しが公表される6月理事会に先送りされると予想する。
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