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2022年4月第3週目(11日~15日)の相場展望

2022-04-10

先週の前半、米連邦準備理事会(FRB)が6日に公表した3月15─16日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受け、50ベーシスポイント(bp)の利上げを実施するとの観測が強まっていた。注目のFOMC議事要旨では、特にインフレ圧力が強まった場合には、今後のFOMCで大幅な利上げ決定が適切とみていたことが明らかになった。また、3月FOMCでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を50bp引き上げることが望ましいとの考えが示されていたことも分かった。議事録から市場は3.25%までの金利引き上げを予想した向きもあったようで、ドル買いが継続となり、金利敏感株が多いナスダック指数は2日連続で約5%の大幅下落となった。また保有国債を月600億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月350億ドルの合計950億ドル削減することで「おおむね合意」をしているが、まだ買い入れ自体は継続することとなった。市場では、平均で年内の政策金利水準を2.5%程度で織り込む動きとなっているようだ。

FRB 2022年12月の政策金利予想


週後半には、FRB委員であるリッチモンド連銀のバーキン総裁、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁とアトランタ地区連銀のボスティック総裁は、大幅な利上げに対してやや抑え気味の発言をしている。コメントは、「中立的な水準までの金利の引き上げにはまだ時間がある」「ウクライナ危機など不透明感が多い」「需給不均衡において労働市場が大きな部分占める」「今年末か来年初めに中立金利水準に到達の可能性」といった内容であった。FRBが目指す中立金利水準は、2~2.5%なので市場はそれを大きく上回る利上げを想定していることになる。FRB内では、先々まで決定するには今後のインフレ、ウクライナや新型コロナの動向次第で変化していくのではないだろうか。市場は先を読み過ぎの感じはしている。市場の読み通りにドル高が進行しているが、行き過ぎると調整もありそうだ。 ドル買いが強まり、ドル円は123円前半から後半へ上昇し堅調推移、ユーロドルやポンドドルの欧州通貨は下落している。特にFRBとの金融政策に違いが見られるECB管下のユーロドルは軟調基調が鮮明で直近安値を更新し続けている。強烈なドル買いが継続しているが、シカゴ先物市場でのIMM投機筋のユーロドルポジション建玉では、大幅ショートの豪ドルやポンドドルと比較しても意外とややロングなのが目に付く。投機筋は大きくユーロを売り越しているわけではなく、意外と利上げのタイミングが早かったポンドや景気に堅調さが見えている豪ドルは売り越しである。今後のECBの金融政策に対するスタンス変更を見込んでいる可能性もある。ECBの動きが緩慢なのは以前から変わらずで、国によって違う環境下で個々の意見は違ってくる。直近のユーロドルは下げてはいるが大きい下げではなくじり安の動きと捉えられる。

ブルームバーグの調査によると、 欧州中央銀行(ECB)は、ウクライナの戦争がユーロ圏の経済成長に及ぼす脅威に目をつぶり、資産購入による量的緩和(QE)を今夏で終了する一方、12月に過去10年余りで最初の利上げに動く準備を整える見通しだ。最新の調査に回答したエコノミストらが予想した。ユーロ圏のインフレ率はECBの物価目標(2%)の既に4倍近いペースに加速し、ロシアのウクライナ侵攻の影響でさらに拍車が掛かる状況にある。調査結果によれば、純資産購入は7月に終了し、中銀預金金利(現行マイナス0.5%)は約9年ぶりに来年3月時点でゼロに戻ると見込まれる。ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレーも、12月の利上げ開始後に政策金利が漸進的に引き上げられるとみていることで、相場は年末までの利上げをほぼ織り込んでいる。もしかすると織り込みすぎなのかもしれないと考える。ECBはユーロ圏といういびつな仕組みであるため、米国同様のインフレが拡大してからの政策変更となって、インフレ対処に遅れが出ると考えている。変更の際には急変となる可能性もあり、ユーロの急変動がみられるかもしれない。

チャートからは、約1ヶ月前に2017年からの長期の上昇トレンドラインにワンタッチしてやや戻ったあとは、軟調でじり安が継続。ここをしっかりブレイクし1.07付近まで下げると下げが加速し再度底値トライが続きそうだが、この線上で止められると少しずつ上昇する可能性も残っている。インフレ要因が強く、ドル買いが一方的に進行しており現在のドルの水準は相当幅の利上げを織り込んでいる可能性も拭えない。軟調な展開が長く続いていることで反転の見極めは難しいが、ひとつの目途としては週足で4週前の高値を越えたら買いを行うのは無難な取引手法である。

ユーロドルの日足チャート


今週の注目イベントは米国の消費者物価指数と卸売物価指数である。ロシアのウクライナ侵攻から原油高へ振れたことが指数へ本格的に影響するのは今月からだろうが、3月もやや影響があるかもしれない。同日には日本の企業物価指数が発表予定であり、物価が実際に上昇となったのは4月からなので、原油高の影響が企業間物価に転嫁されているのかどうか。結果次第では、ドルと円は別々のタイミングで動きが出るかもしれない。特にドル円は124円台に乗せてきたため、直近高値を狙う位置まで来ていることで要注意だ。またECBの政策金利委員会が予定されており、ラガルド総裁が金利とウクライナ情勢への姿勢が伺えそうだ。週末金曜日からは世界各国でイースター休暇が始まることで、薄い相場の中で仕掛けがあると大きく動く可能性がある。
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