原油:供給増による需給緩和は当面見込み難い
2022-04-06
■ 米シェールオイルの増産は慎重に進められよう
各国でロシア産原油離れが進んでいる。ロシアは原油生産量で世界第3位(日量1154万バレル、2020年、BP)、原油輸出量で世界第2位(日量519.6万バレル、2018年、IEA)を占めているが、ロシア産原油の輸入に関して、米国が即時禁止を発表したほか、英国も段階的に縮小して年末までに完全に停止する方針。欧州連合(EU)は代替調達などを進めて2027年までにロシア産原油への依存を絶つ計画を示していたが、ロシア軍によるウクライナの民間人への残虐行為疑惑が浮上したことを受けて、ランブレヒト独国防相は4月3日にロシア産エネルギーの輸入禁止に踏み切るべきと主張するなど、EUによる対ロシア追加制裁の可能性が強まっている。
ロシア産原油を穴埋めするため重要な位置を占めるのが、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する組織(OPECプラス)であるが、3月の減産順守率は151%と前月(136%)から上昇したほか、3月31日に開催した閣僚級会合で5月まで現行の生産計画を維持するなど、増産意欲は乏しい。そこで注目されるのは、米国のシェールオイルの生産動向である。原油先物価格(WTI)と原油採掘リグ稼働数は2012年以降概ね連動してきた。WTIが1バレル100ドル前後で推移していた2014年9月にリグ稼働数は1601基で過去最高を付け、20ドルを割り込む水準まで下落した2020年8月には172基まで減少した。足元で、WTIは2014年を上回る水準まで上昇しているものの、リグ稼働数は4月1日時点で533基とピークの約3分の1にとどまっているほか、増加ペースも鈍い。ダラス連銀が石油・天然ガス産出企業132社を対象に行ったアンケート調査(調査期間は3月9-17日)によれば、WTI高騰にも関わらず増産を抑制している理由に関して、約6割が「資本規律を維持するための投資家の圧力」と回答し、「環境・社会、ガバナンスの問題」との回答は11%にとどまった。WTIの下落トレンドが長期化したことにより、石油企業の投資家はキャッシュフローの確保や株主還元などの資本規律の維持を求めるようになったと推察される。
バイデン大統領はガソリン価格の抑制を狙い、公有地で許認可を得ながら原油を生産せず増産を渋る石油企業に対して「対価」を求める方針を表明するなど圧力を強めるが、石油企業側は反発している。米シェールオイルの増産は慎重なペースで進められる公算が大きく、供給増による原油需給の緩和は見込み難いとみておくべきであろう。