日銀短観:循環的な回復が一巡し、景気減速感が強まる
2022-04-04
■ 原燃料価格高騰などの影響が強まるが、輸出産業では円安の恩恵を受け業況悪化は限られた
今朝公表の日銀短観(2022年3月調査)では、3月21日までまん延防止等重点措置の適用が続いたこと*1、ロシアへの経済制裁および燃料・資源価格高騰などに起因し、企業の景況感および先行き見通しが悪化していることが示された。
業況判断DI(現況)は、大企業・製造業(14、前回比3ポイント低下)、大企業・非製造業(9、同1ポイント低下)ともに、コロナ禍直後の景気急減速が最も強く反映された2020年6月調査以降初めて低下した。先行きは、大企業・製造業(9、現況比5ポイント低下)、大企業・非製造業(7、同2ポイント低下)そろって一段と低下し、コロナ禍以降の循環的な景気回復の一巡が示唆される。業種別では、繊維、紙・パルプ、鉄鋼など素材業種で先行き見通しの悪化が目立っており、経済制裁や原燃料価格高騰の影響が徐々に強まろう。一方、電気機械、自動車などの見通しは悪化しておらず、輸出産業では円安の恩恵を受けて業況悪化は限られている。なお、事業計画の前提となる2022年度のドル円の想定為替レート(全規模、全産業)は111円93銭で現在より10円程度の円安水準となっており、円安が長期化する場合は輸出業種、輸入業種で一段と明暗が分かれると考えられる。
大企業全産業の2022年度設備投資計画(前年度比2.2%増)は、3月調査では前年より小幅な伸びにとどまった*2。非製造業(同1.6%減)では慎重な計画が示された一方、製造業(同8.4%増)は2000年以降で最も高い伸びとなっており、コロナ禍での工事の遅れや案件繰り延べによる潜在需要が大きいこともうかがえる。
大企業・製造業の製商品・サービス需給判断DI(需要超過-供給超過、(国内:1、前回比2ポイント低下、海外:8、同変わらず)、製商品在庫水準判断DI(過大-不足、6、同1ポイント上昇)などを見る限り、供給制約は若干和らいだ模様である。ただし、原燃料価格高騰を受けて仕入価格判断DI(上昇-下落、58、同9ポイント上昇)、販売価格判断DI(上昇-下落、24、同8ポイント上昇)は大幅上昇が続いており、消費者物価などへの転嫁が進む素地は整っている。
*1 調査票の回収基準日は3月11日で、まん延防止等重点措置解除の決定前となっている*2 3月調査時点では計画未定案件が多いため、毎年低い数値となりやすい