米国株:自社株買いへの制約が強まるか
2022-04-01
■ 予算教書で自社株買いに対する課税と規制が提案された
■ 自社株買いにブレーキがかかり、米国株の足かせとなる可能性も
S&Pグローバルの集計によれば、S&P500構成企業の2021年10-12月期の自社株買いは2701億ドルと、前期比15%増加し2四半期連続で過去最高を更新。新型コロナ禍の落ち込みから回復途上にあった前年比では107%増とほぼ倍増している。経営者は自社株買いを行うことにより、発行済株式数を減らし1株当たり利益(EPS、純利益/発行済株式数)を増加させて、株価を上昇させることを狙う。米金融引き締め観測の浮上やロシアによるウクライナ侵攻で株価が下落した今年1-2月も旺盛な自社株買いが行われているとの報道もあり、利益成長の鈍化懸念など業績面での悪材料を補おうとする思惑も透けて見える。
こうしたなか、バイデン米大統領は28日に発表した2023会計年度(2022年10月-2023年9月)の予算教書の一部として、米国では初めてとなる企業の自社株買いへの課税を提案した。自社株買い総額に対し1%を課税するとともに、経営者が数年間にわたり持ち株を売却できない規制を導入することを目指す。自社株買いでつり上げられた持ち株の売却により自身の保有資産を増加させようとする経営者の行動を抑制することを狙い、自社株買いが格差拡大を助長しているとの批判に応えようとしている。
自社株買い課税・規制法案が議会を通過するかどうかは不透明だが、自社株買い課税が財政赤字の圧縮につながるようであれば共和党議員からの支持を得られる可能性があるほか、一部の民主党議員は自社株買いによって賃金への分配や研究開発投資などがおろそかになっていると批判している。実現すれば、投資主体別で米国株の最大の買い手になってきた企業の自社株買いにブレーキがかかり、米国株の足かせとなる可能性があることから、今後の議論の行方に注目したい。