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米予算教書:2023年度も予算審議は難航が見込まれる

2022-03-31

■ バイデン政権は3月28日に、2023年度予算審議のたたき台となる予算教書を米議会へ提出

■ 歳出案をみると、政権の重心が新型コロナ禍から国際情勢への対応に移ったことがわかる


   バイデン政権は3月28日に、2023会計年度(2022年10月-2023年9月 / 以下、年度)の予算教書を米議会へ提出した。予算規模は5兆7900億ドル規模。トランプ政権下の2020年に対GDP比14.9%まで増えた財政赤字を今後10年間に5%未満へ削減するとしており、今年11月に実施される中間選挙へ向けたアピールポイントにしたいとの意図もみられる。

   2023年度予算案では、歳出は前年度比1%減の5兆7920億ドルとした。内訳では、新型コロナウイルス禍に関連した支援プログラムなどを廃止した一方、国防関連支出は総額8133億ドルへ要求額を増額した。政権の重心が、新型コロナ禍への対応から国際情勢の安定化に移っている証と言えよう。バイデン政権は「国家安全保障への過去最大規模の投資」と説明しており、さらに2024年度に8430億ドル、2025年度までに8510億ドルに増えるとの見通しを示した。なお、3月11日に米議会でようやく成立した2022年度の本予算でも、国防関連支出を7820億ドル(前年度比6.7%増)としている。これらはウクライナ情勢への対応を示す項目であるが、現野党の共和党はむしろ、国防関連支出の増額を容認している。一方、現与党の民主党内では急進派の支持を得られない可能性がある。

   歳入は前年度比4.5%増の4兆6380億ドルとした。特に富裕層や企業向けへの新たな増税案が歳入増に寄与する見込み。提案された増税案では、資産1億ドル以上の富裕層に対して最低20%の所得税率(未実現のキャピタルゲインを含む)を設けるほか、企業向けの連邦法人税率を28%へ引き上げるとした。その結果、2023年度の財政赤字は前年度比で18.4%削減できると試算している。ただ、これらの増税案は共和党が反対する公算が大きい。

   今回提出された予算案は議会審議のたたき台であり、歳出・歳入両面で米議会での調整の必要な項目が多数確認された。そのため、今後も政府機関の一部閉鎖が金融市場で話題になる時期が度々訪れよう。2022年度は本予算の成立の遅れで、計3回のつなぎ予算が作成された。今後の予算案の経緯を追っていくうえで、今回提出された予算教書は「前提」として確認しておくべきだろう。
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