ドル円 2015年6月高値を視野に
2022-03-30
■ 日銀が連続指し値オペを実施、長期金利上昇を抑える姿勢は円安に拍車をかけた
■ 米大幅利上げ観測が浮上、日米金融政策の乖離が際立ち、ドル高・円安の基調は続こう
25日の本邦債券市場で10年国債利回りは日銀の変動許容幅の上限0.25%に近づき*、日銀は28日、固定利回り入札方式による国債買い入れ「指し値オペ」を通告した。市場金利の上昇を受けて、同日午後には645億円分の売却に応じた金融機関が現れ、29-31日にも買い入れ金額を無制限とする連続指し値オペを実施すると発表。10年国債金利の操作目標を0%程度とする金融市場調節の方針を実現し、政策の枠組みであるイールドカーブ・コントロールに基づき、長期金利上昇を抑える姿勢を堅持した。
日銀は指し値オペによって為替市場が変動することを意図していないが、先般、黒田日銀総裁は金融緩和の効果波及には円安方向に動くチャネルがあると指摘している。そのうえで、為替レートは、(1)価格競争力を高めることで輸出数量の増加につながる、(2)名目の輸出金額や海外事業の円建て収益は増加する、(3)輸入コスト高を通じて家計の実質所得や内需型企業の収益を下押しする、の3つの経路を通じて経済・物価に影響を与えると指摘した。今朝公表された金融政策決定会合における主な意見(17、18日開催分)でも、資源価格や為替相場の変動そのものではなく、これらが経済・物価に及ぼす影響を考え、物価目標の安定的な持続を目指し、緩和姿勢を継続することが重要であるとした。円安は基本的にプラス効果が大きいが、マイナスの影響もあるため留意が必要だとする従来の認識が示された。
ドル円は28日の欧州市場序盤に125円台前半へ急騰、2015年8月以来のドル高・円安水準を記録。1日の上昇幅としては3円超と2020年3月以来の大きさとなった。日米金融政策の方向性の違いが顕著となるなか円全面安の様相を呈したが、黒田日銀総裁が過度な円安に警鐘を鳴らした2015年6月高値125円85銭が「黒田ライン」として意識され、さらなる円売りには歯止めが掛かった。米国ではパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が5月以降の会合で大幅な利上げの可能性を示唆しており、目先はドル安に向かいにくい。ドル円が「黒田ライン」を上抜ければ、1990年高値160円35銭から2011年安値75円55銭の下げ幅に対する61.8%戻し127円96銭付近が上値メドとなりそうだ。
*2021年3月、日銀は政策点検で上限を「0.25%程度」と明示