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2022年3月最終週(28日~1日)の相場展望

2022-03-28

前回の黒田総裁定例記者会見が起点となって円安が一気に進んだ。その前からじりじりと円安に動いていたドル円は、会見後に118円台から上昇を加速させた。先週は一気に122円台まで突入して、節目の125円を狙うのかと思わせたが週末に利食いが出て121円台で推移している。米国バイデン大統領の政策転換から始まり、ウクライナ情勢が原油価格の上昇を加速させ、円安と兼ね合って日本でのコスト上昇は抑えが効かない状況だ。自動車などへのガソリン価格は政府が175円を高値にして抑えているが、原油を材料にした加工品には大インフレの波が押し寄せている。最終消費財への転嫁も待ったなしで、今年後半は値上げラッシュとなってくるはず。一般市民にはキツイ現実だが、悪いことばかりではない。日本企業の大部分を占める輸出企業は円安によって大きな利益が見込まれる。それを背景に円安=株高の競演となった。日経平均は米国株の戻り以上の上げを見せており、円安の恩恵を受けているようだ。

今回は急な物価高ということで、一般国民からは文句が多く入りそうだが、それは日銀が長きにわたって期待していたものであり、企業がようやく物価を上げる口実が出来上がっている。日本では薄利多売の細かな利益取りを背景に、各企業はギリギリのところで利益を出していた。しかし今回のインフレ懸念によって、実際に大きめの値上げをする企業が多いだろう。新型コロナに加え、ウクライナ情勢ということで、一過性かもしれないが、一度上げた値段を下げることは難しい。となると新型コロナとウクライナ情勢からのダブルの悪影響が収まれば、サービス業にとっては消費増の追い風と共に利益幅の増大で企業利益が増え、それを働き手に還元する動きが出ると期待している。コロナ前に近い工場稼働率と原油価格の低下が伴うことになれば、人口減少の日本であっても、給与増となれば本当の国力が戻ってくるかもしれない。またこのような事がない限り、物価は上がらず、給与も上がらない。若い人たちが先々の不安を抱えて借金をしない、という現状から脱して欲しいと願うばかりだ。日本以外の先進国ではほとんど物価高+収入増によって、借金は多いが、将来の展望も希望を持っている国が多い現在、世界ではほぼ日本だけが下向きの経済情勢が長く続いており物価も賃金も上がらない状態で、消費が上がっていない。

現在121円台のドル円は、円安傾向がしばらくは続くと考える。市場が日銀に突きつける歪であろうが、一概にそうなのかと考えてしまう。インフレを望んでいたのは日本であり、悪かろうが良かろうが、ある程度コントロールが出来る範囲内であるなら問題はないのかもしれない。どっちにしろ、円安は進んでいく。130円なのか、140円なのかはわからないが、短期的に上げ下げしても下は見ず上を向いて歩こうではないか。 そう思わせるくらい前回の日銀総裁の記者会見はインパクトがあった。先週紹介した円安銘柄として豪円が一気に92円台まで上昇したのは予想外であった。ただドル円に関しては、米国FRB高官がここぞとばかりに金融政策の正常化を図ってくるのは想定していたので、121円付近を目指したのは想定内。自身でも黒田総裁の会見時118円台の高値で買ったが121円と122円で利食いをしている。今回の明白な円安誘導?会見はめったにお目に掛かれないチャンスとなった。テクニカルからは上昇過熱感は既に台頭していたが、そこはモメンタムの成せる業で方向感がはっきりと出る相場にはレベル感は関係ない。下で買えない人は上で買うしかなく、高値で売っていた投資家は121円突破後に投げてきたと思われる。黒田総裁の発言があっても120円でショートに下向きは多かったようで、損切りを巻き込んでの上昇への好循環となっていたと考えられる。テクニカルから見ると、日足のRSIが70を越えたあたりから加速を見ている、AI自動売買プログラムなどは70越えで逆張りから順張りに変化し買いに転換したと考えられる。RSIからは行き過ぎても90を越えて上に離れる動きは滅多にお目に掛かれない。もしあったとしても一度70程度まで下がってきてから再度上昇となることが多い。流石に87くらいから売りが出ているが、10ポイントごとの節目で80から上は利食いが多いと考えたことで、121~122円の売りでの利食いとした。87まで到達したが流石に90手前で様子見することにした。次の動きとしては、70を下に割り込むと調整局面、70で止まり上昇すれば一段高を想定している。RSIなのでドル円のレベルは見ておらず、このテクニカル指標のみを売買指針に使ってみても役立つのではと考えている。

122円台では流石にもみあいとなってはいるが、節目の125円を目指して上昇していくと予想する。市場が円安でインフレ加速したらどうするのか?という問いかけに日銀はどう反応するのだろうか。ボラティリティーが大きく上昇しているので、逆張りは用心しながら引き付けて小ロットで、基本は順張りであり上昇トレンドが出ていることから125円辺りまでは押し目で買いのスタンスが成功しそうだ。今週に限っては、月末フローの関係で大きく振れる可能性もあり、123円台乗せがあるかもしれない。その後は上下のポジション調整をし、堅調維持ながらもやや落ち着いた相場になると予想している。

ドル円 日足チャート


ロシア軍はウクライナへの侵攻を縮小し始めているようだ。NATO側がウクライナに軍備を提供していることが大きく、ウクライナ軍の抵抗が強まっていることとロシア軍隊の疲弊が加味され予想以上の日柄を要している。ロシアは東部2州の独立に目的を絞ったようで、戦火もやや下火で世界経済に与える限定的な影響を市場は織り込んでしまっている。今後はウクライナ情勢より世界各国のインフレとそれに対抗する中銀の金融政策に注目が移っている。中銀高官からのコメントには反応が出やすい相場付きとなってきた。今週はフランスとドイツで消費者物価指数の発表があり、ECBの金融政策に影響を及ぼす結果になるのだろうか。日米欧では失業率、米国ではGDPの発表を控える。
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