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日銀金融政策決定会合:物価認識修正でも緩和継続

2022-03-23

■ 日銀は物価認識を引き上げたものの、欧米と異なり、金融緩和を継続する方針を改めて示した

■ 黒田総裁在任中の政策正常化は見込み難いが、政府の金融政策に対する期待には変化の兆し


   17、18日に開催された日銀金融政策決定会合では、主要政策は据え置かれた。3月末に終了するコマーシャルペーパー(CP)、社債などの買い入れについて、4月以降、感染症拡大前と同程度のペース(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へ徐々に戻していく方針が声明文に付記された。景気認識では、新型コロナウイルスオミクロン株感染拡大を受けて個人消費が下方修正された一方、物価認識では、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比ベースで「プラス幅をはっきりと拡大する」と1月の前回会合より引き上げられた。ただし、1月に公表した「経済・物価情勢の展望」では生鮮食品を除くコアCPI上昇率は2023年度まで2%を下回る見通しが示されており、年度ベースでの2%のインフレ目標到達は想定されていない。

    黒田日銀総裁の会見では、金融緩和政策の具体的な出口戦略の検討は時期尚早とする従来の見解に変化はみられず、政策正常化を進める欧米と政策姿勢の相違が際立っている。黒田日銀総裁は来年4月に任期満了を迎えるため、在任中に政策正常化が進む可能性は低く、現在の物価認識が修正されない限り、正常化の道筋が示されることも期待しづらい。

   経済指標をみると、2月の全国消費者物価指数で、電気代(前年比19.7%上昇)、都市ガス代(同22.9%上昇)が1981年3月以来の高い伸びを記録。貿易統計では貿易収支(季節調整値、1兆314億円赤字)がコロナ禍直後の2020年4月以来の大幅赤字を計上した。国際商品価格の高騰や円安により、日本の交易条件(輸出財1単位と交換可能な輸入財の数量比率)は急激に悪化している。国内で産出された付加価値の海外移転が政治問題化する場合、円安メリットを主張する日銀でも認識が見直される可能性は否定できない。

   政府は3月1日に、7月23日に任期満了を迎える片岡、鈴木両日銀審議委員の後任人事案を国会に提示した。片岡日銀審議委員の後任として、安倍政権以降続いてきたリフレ派候補の擁立が見送られ、金融政策に対する政府の期待にも変化の兆しがみられる。今夏の参院選後に本格化する黒田日銀総裁の後任人事では、政府の方針がさらに明確に反映されると考えられる。参院選で与党が勝利すれば、岸田政権が日銀総裁の任命権を有することになる可能性が高く、選挙結果は次期日銀総裁人事の観点でも注目される。
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