ユーロ圏経済見通
2022-03-22
■景気減速が続いているが、先行き見通しは改善
■ECBは物価認識を改め、政策姿勢を転換
欧州では、昨年11月以降、新型コロナウイルス感染が拡大し、景気回復ペースは減速しているものの、企業、投資家の景気に対する先行き見通しは改善しており、一時的な減速にとどまると受け止められている。2月のPMI速報値は、新型コロナウイルス感染が広がるなかでも、サービス業(55.8、同4.7ポイント上昇)は3カ月ぶりに上昇し、経済活動制限の緩和により内需が持ち直したことを示唆した。製造業(58.4、同0.3ポイント低下)は小幅低下したものの高水準を保っており、供給制約の影響も限定的であることがうかがえる。生産動向に先行する1月のドイツトラック有料走行距離指数(同1.4%低下)が5カ月ぶりに低下し、年明け以降、生産が伸び悩んだことが示唆されているが、製造業の活動は底堅さを保っている。また、2月のセンティックス投資家信頼感指数(16.6、同1.7ポイント上昇)やドイツZEW景気期待指数(54.3、同2.6ポイント上昇)は2カ月連続で上昇し、景気の復調期待も高まっている。
一方で、1月の消費者物価指数(HICP、前年比5.1%上昇)はユーロ圏発足以来最大の伸びの更新が続いている。ドイツでの付加価値税(VAT)の一時的引き下げによる特殊要因が剥落し、インフレのピークアウトが見込まれていたが、エネルギー価格上昇に相殺され、物価高騰に歯止めが掛からなかった。ロシアとの対立が明確となり、エネルギー需給逼迫観測が高まっているため、物価上昇圧力は一段と強まることが想定される。欧州中銀(ECB)は2月3日の理事会で物価認識を改め、政策調整の必要性を認めた。漸進的に引き締めを進める方針を掲げているものの、3月のECB理事会で中期的な物価見通しやその影響を分析し、今後の政策調整の必要性を検討する方針を示している。ウクライナ情勢緊迫化により急激な政策転換は想定しづらい一方、インフレ長期化も懸念され、資産購入プログラム(APP)終了の前倒しや年内利上げ開始など、金融引き締め前倒しへの警戒が続くとみられる。