ブラジルレアル:物価上昇圧力の鈍化がカギに
2022-03-21
■ ブラジル中銀は9会合連続の利上げを決定したうえ、次回会合での追加利上げを示唆
■ 今後、ブラジルの物価上昇圧力が鈍化した場合、特に円に対するレアルの一段高を見込む
本稿では、3月16日に開催されたブラジル中央銀行(以下、BCB)による金融政策委員会(以下、COPOM)と、直近のブラジルレアル(以下、レアル)の動向を整理したい。BCBは3月COPOMで1.00%幅の利上げを決定し、政策金利を11.75%とした。利上げ実施は9会合連続となり、いずれも全会一致で決定している。これで、BCBは昨年3月以降の利上げ幅を合計9.75%まで拡大させたことになる。また、BCBは「次回の5月会合でも同程度の利上げを見込む」と、今後も利上げ姿勢を継続することを示唆した。
BCBの利上げ姿勢継続は、直近でも続く物価上昇圧力の高まりが背景にある。2月の消費者物価指数(IPCA)上昇率は、前年比10.54%と7年ぶりの高い伸びを記録したほか、同指数を構成する全項目が上昇。BCBが設定した2022年の物価目標レンジ(同2-5%)上限を大きく上回る状況が続く。ウクライナ情勢の影響に伴う食料品やエネルギー価格上昇も、物価上昇圧力につながっている。また、ブラジル経済省は3月18日、今年の経済成長率を前年比1.5%増へ下方修正しており、物価上昇に伴う景気への悪影響には注意が必要となる。
一方で、1月以降のレアルは堅調に推移。背景は(1)実質金利のプラス化、(2)貿易黒字幅の拡大見込み、(3)BCBの信頼性の高さ、の3点が挙げられる。(1)は利上げ継続により、足元では「政策金利(11.75%)-物価上昇率(10.54%)」とプラス幅が拡大。レアルの「高金利通貨化」が一段と進んだとの解釈だ。(2)は、1-2月の貿易収支が計38億ドルの黒字となったうえ、5月にかけてブラジルの輸出品目上位である大豆の収穫シーズンを迎え、昨年と同様に輸出額を押し上げる可能性が高い。(3)はBCBがここまで物価上昇に先んじて金融引き締め姿勢を強めてきた実績から、金融市場における信頼性は高く、レアル高に繋がるとみる。そうした背景から、年明け以降のレアル円は20.2円台後半から23.5円台後半へ上昇し、2021年高値(22.634円)を明確に上抜けた。引き続き、景気と物価動向には注意が必要だが、今後、物価上昇圧力が鈍化した後にBCBが景気重視に軸足を置く政策に移行した場合、レアル高地合いが強まると予想する。特に、「低金利通貨の代表格」である円に対して、「高金利通貨の代表格」のレアルは、年内に2020年2月高値(26.114円)へ向けた一段高を見込む。