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ショック第2波への備え

2022-03-15

■ 16日にロシアの外貨建て政府債務の利払いを控え、政府の履行姿勢が焦点に

■ ロシア向け与信の損失は金融システム内で吸収可能だが、投機的取引の資金繰りは懸念


金融市場では経済制裁の発動決定直後から大きな反応が示され、原油、天然ガス、ニッケル、小麦、などロシアの世界シェアが高いエネルギー、金属、農産物価格が暴騰し、ロシアルーブルが急落した。先進国でも、ドル需要増加に伴ってユーロや円からドルに交換する際の上乗せ金利を示すベーシススワップが一時急拡大し、ドル調達コストが上昇した。

国際商品価格の急激な変動は一服しつつあるが、今週以降、欧米諸国によるロシアへの経済制裁の影響が徐々に表れ始めることが見込まれる。当面の注目は、16日に控えているロシアの外貨建て政府債務2本の合計1.17億ドル分の利払いの行方である。ロシアでは、5日に自国に制裁を科す国・地域への債務に対してルーブルでの返済を認める大統領令が発効されており、利払いが契約通り履行されない可能性が高い。猶予期間が30日間設けられるものの、ロシア政府の姿勢については期日直後に明らかになろう。債務不履行(デフォルト)と認定されれば、通貨ルーブルの一段の信認低下は避けられず、通貨下落圧力がさらに強まるとともに、国内からの資金逃避も促される。ロシアではすでに外貨引き出しや海外への外貨持ち出しには上限が設けられているが、経済の混乱に拍車がかかることは不可避な状況である。なお、2月28日以降、モスクワ証券取引所は短期金融取引など一部を除いて取引停止が続いており、ロシアの株式、債券はこの日以降、価格、利回りの更新が止まっている。取引再開後は非連続的な価格急落や利回り急上昇が見込まれ、売却殺到により取引成立の見通しも立たないため、流動性は極めて低い状況が続くことが予想される。

金融機関のロシア向け与信残高をみる限り、想定される損失は金融システム内で吸収可能な金額にとどまっているが、先進国への波及経路として注意したいのは金融監督の対象外となっている投機的取引である。本稿執筆時点では、ロシア関連投資での資金繰り悪化は伝わっていないが、ロシア関連の持ち高解消が制約されるなか、直接関係のない資産も含めて換金売りが波及し得る懸念は残される。市場価格の急激な変動を除けば、経済的影響はまだ表面化しておらず、危機の波及は、その有無も含めてこれから明らかになると考えられる。
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