ECB理事会レビュー
2022-03-14
■ APPを7-9月期に終了させる可能性が示されたが、政策対応の選択肢拡大が狙い
■ 利上げに踏み切れるかはウクライナ情勢に大きく左右されよう
欧州中銀(ECB)は10日に理事会を開催し、政策金利の据え置きとパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の終了を決定した。また、通常の資産購入プログラム(APP)に関して、今年4-6月期に月額400億ユーロ、7-9月期に300億ユーロ、10月以降は200億ユーロに据え置くことが見込まれていたが、今回、4月に400億ユーロ、5月に300億ユーロ、6月に200億ユーロに一時的な増額期間が短縮されたほか、APP終了後に中期的なインフレ見通しがデータで裏付けられれば7-9月期にも終了する可能性が示された。利上げ開始時期に関して、従来は「利上げの少し前にAPPを終了する」としていたが、「APP終了後、しばらくしてから」と修正し、APP終了が直接的に利上げの思惑につながらないよう配慮した。
新しい経済・物価見通しでは、ユーロ圏の実質GDP成長率に関して、2022年、2023年がそれぞれ下方修正(4.2%→3.7%、2.9%→2.8%)され、2024年は1.6%に据え置かれた。インフレ率に関しては、2022年から2024年までいずれも上方修正(3.2%→5.1%、1.8%→2.1%、1.8%→1.9%)された。ラガルドECB総裁はインフレ率が目標の2%で中期的に安定する方向で進んでいると述べており、ECBは利上げに関するフォワードガイダンスが満たされつつあると判断した模様で、ウクライナ情勢を巡り景気の先行き不透明感が強いなかでもインフレ抑制を優先する姿勢を示した。APPの早期終了の可能性が示されたことで、年内利上げの公算が高まったとみる向きもある。ただ、同総裁はこの日の決定に関して、金融政策正常化を加速させるものではなく、正常化を段階的に進め、現在の不確実性が増している状況に対して機敏に対応できるよう、政策の選択肢を広げるものと狙いを説明している。西側諸国によるロシア向け経済金融制裁が欧州経済に及ぼす悪影響は時間の経過とともに深刻化することが見込まれ、利上げに踏み切れるかはウクライナ情勢に大きく左右される公算が大きいと判断される。