2020年1月第3週の相場展望(1月13日~17日)
2020-01-15
(先週の相場)
トランプ大統領のイランへの強気な発言と、米国とイランの戦争への懸念が増大し、週明けのアジアの株式相場は大幅な下げに見舞われ、逆にリスクオフ資産である金価格は大きく上昇して始まった。金価格は1611ドルまで急騰し、昨年来の高値を更新している。しかし月曜日のアジア時間夜間で米国株式相場は急落からのショートカバーで反転し始め、イランがイラク駐留米軍をミサイルで攻撃したことで、米国が自国司令官を殺害したことに対する報復は終わったということ、またトランプ大統領も控えた発言となったことで、火曜日からは急反転の相場となった。
昨年同様、トランプ大統領の各国への態度等に振り回される展開となっている。短期の変動率(ボラティリティ)は上昇しリスクオフになるが、その後急速にリスクオンに戻す相場が続いている。年末にかけてテクニカルではリスクオンが行きすぎ、買われすぎと言われていた世界先進国の平均株価には売りのタイミングを待っていたロング勢(買い持ち投資家達)は薄い相場の中利食いを急いだようだ。しかしリスクオンがこのまま進んでも、数か月の期間でもまだテクニカルからの過熱感は取れてはいない様子で、今週の相場へと先行きの方向性は持ち越された感じ。
3月には、アメリカにおいて大統領候補の予備選挙が集中する日の大きなイベントであるスーパーチューズデーを年前半の大きなイベントとして市場関係者は捉えている様子で大きな相場背景の一つとされる。この環境下の中、米国雇用統計の予想を下回ったことでややリスクオフの展開へと戻している様子。実際は、買い方の利食いがほとんどだと思われる。
(今週の相場展望)
金価格は、米国雇用統計の結果をきっかけにショートカバー主体で、サポート付近1540ドルから1560ドル台まで戻したが、米中の貿易協議の第一弾合意の翻訳作業が終了し、更なる前向きなものと捉えられ、サポートを割り込んでの1530ドル台へと入っている。これは米国株式相場の崩れがイランへの懸念によっても意外と小さく、高値更新へとなったために楽観的な意向が多いことが理由であろう。ドル指数は先週の半ばから変化は少ないが、株高を受けてドル円だけではなく全般に円安が進行している。
ドル円は110円を上抜けし、110.24と今日時点での長期三角持ち合いの抵抗線ギリギリまで買われている。110.60付近を大きく上に抜けていけば、次の抵抗線である111円の後半までの可能性は大きくなろう。そこまで上昇すれば三角持ち合いは終了とみなされやすく、2018年の高値114.60付近を目指してもおかしくはないのだが、112円を上に抜けるかは疑問が残る。米中貿易協議の合意が進んでいくと、米国内への日本からの輸出も増加すると期待され、その利益を還元するのにドルから円へと交換することも先行き考えられると、そこからすんなりと上昇するよりは、今年のコアレンジは、もしも111円台へ乗せが条件となるが、105-110から108-113と変化するくらいだろう。
もしリスクオンが進んで、前述のレベルになるとすると、米国ダウは3万ドル、日経平均は25000円、HK50指数も連動の傾向にあるため30000香港ドル付近まで上昇し、節目の数値に到達するはずだが、もしこれらのレベルを達成するとしても、達成前に利食いをこなすのにはやや時間が掛かると予想する。金価格は、その時1508ドルの下値抵抗レベルまで下落するのではないだろうか。
原油も下げているため地政学的リスクが収まり、商品価格全般への売りからリスク資産へと移動する可能性もあり、また以前レポートにも書いたが、昨年後半から継続中の債券から株へのグレートローテーションは継続中と考える。
英ポンドはGDPの結果が予想を下回り、英国中央銀行も景況感に対して警戒している発言があり、ポンドは軟調で推移している。短期上昇からの利食いが継続しているようだ。ポンドドルは一目均衡表の下値サポートが1.2905付近に通っている、ここでサポートされるかどうかが注目レベル。
ユーロは小動きが継続しているが、昨年末からの短期下落トレンド上限のレベルに差し掛かっているタイミング。今週も堅調さを保てば1.1230付近の高値を目指して行くと考えている。
今週は各国の物価指数が幾つか発表されるタイミングとはなっているが、これらは大きな相場要因とはなりにくい。注目の経済指標は、水曜日の米国ニューヨーク連銀想像業景気指数、木曜日のフィラデルフィア連銀製造業指数の米国製造業の指標群。昨年後半から陰りが見られる製造業統計の悪化に拍車が掛かると、株価の上値を抑えられそう。またFRBの金利への発言も気になるところで、ドル相場への悪影響の可能性が残る。また米国の小売売上の発表も、年末のクリスマス商戦の消費結果から先行き景気動向を探る指標となりそうだ。