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日本株:下値余地を探る展開となるおそれ

2022-03-09

■ スタグフレーション懸念を背景に、欧州株の下落に日米株が追い付いてきた

■ 日本株の割安感は強いが、目先は下値余地を探る展開となるおそれ


   ウクライナ情勢の深刻化を受けて、世界的に株価の下げ幅が拡大している。昨日時点での年初来下落率は、ロシア向け経済金融制裁の直接的な影響を受けると懸念された欧州株(ストックス欧州600指数:14.49%)が米国株(S&P500:11.86%)や日本株(日経平均:12.40%)を上回っているものの、その差が際立っているようには感じられない。欧州金融機関の資産に対するロシア銀行システム向け与信の割合は概ね限定的であるほか、ロシア向け直接投資は2014年のクリミア紛争以降は急激に縮小していることから、ロシア発の世界的な金融危機に至る公算は小さいとの見方が強まった。こうしたなか、経済金融制裁に対する報復としてロシア政府が欧州向けエネルギー輸出を削減するとの警戒感がくすぶるほか、欧米がロシア産原油の輸入禁止を検討していると伝わり、原油先物価格(WTI)が一時2008年9月以降で初めて1バレル130ドル台に到達。世界的にスタグフレーション(景気減速とインフレ高騰の同時進行)懸念が強まり、欧州株に近い水準まで日米株が下落してきたと解釈される。

   日経平均も下げ幅を拡大し一時2万5000円台を割り込み、2020年11月以来の水準を付けている。日経平均の向こう1年予想株価収益率(PER)は昨日時点で14倍ちょうどまで低下しており、2018円以降は割安感が強く意識されてきた株価水準に達している。ロシアとウクライナを巡り、近く行われる見込みである4回目の停戦交渉や10日の外相会談など、対話の機会は閉ざされていない。停戦交渉に進展がみられれば、株価が急反発する可能性があることは確かだろう。しかし、目先は欧米による経済金融制裁のさらなる強化が意識され、投資家のリスク選好が改善に向かいにくく、株価は一段と下値余地を探る展開となるおそれがある。下値メドとしては、株価純資産倍率(PBR)1.1倍に当たる24640円、2018年以降の重要な節目となってきた24000円付近、PER13倍に当たる23324円、PBR1倍に当たる22401円、などが挙げられよう。
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