News

FRBの金融政策スタンスは、大きく変わらず

2022-03-08

■ 金融市場は、3月FOMCでの0.25%幅の利上げ実施を織り込んだ

■ FRBは今のところ、ウクライナ情勢による米金融政策へ与える影響は軽微と想定か


   パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、3月初旬に半年に一度の議会証言を行った。2日は下院金融サービス委員会、3日は上院銀行委員会で開催された。前者での発言は3月3日発行のPRESTIA Insight*1で紹介した通り、3月15、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%幅の利上げ提案などとなっている。加えて、上院での議会証言では、さらに具体的に、金融引き締めへ積極的な姿勢が示されたと解釈している。

  パウエル議長は上院の議会証言で、「インフレが改善しないと分かっていれば、早期にツールを活用していた」と、これまでのFRBの判断が遅れていることを認めた。そのうえで、「次回会合でバランスシートの縮小ペースを決定」と発言。また、利上げについても、「ロシアによるウクライナ侵攻を受け、金利に関する考え方が変わるか判断は尚早」としながらも、「年内に複数回の利上げを見込む」、「インフレ高止まりなら、1回もしくは複数回の会合にわたり、それ以上の利上げを行う」と言及した。さらに、「ウクライナへの進行が始まる前に想定していた計画に沿って、今後も政策を進めていくのが適切」との考えも示した。今のところFRBは、ウクライナでの混乱が米景気や米金融政策へ与える影響は比較的軽いと想定しているとみられる。

  4日に公表された2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比67.8万人増へ増加したうえ、失業率が3.8%へ低下し、米労働市場が堅調であることが示された。そうしたなか、4日の米国債利回りは、ウクライナ情勢を巡って投資家心理が一段と悪化したことで、長期ゾーンが主導して大幅に低下した。ただし、米短期金融市場ではパウエルFRB議長による発言が材料視される形となり、3月FOMCの政策変更の織り込みは大きく変わっていない。

また、シカゴ地区連銀総裁は4日、「年内に政策金利を中立に近い水準へ引き上げるべき」との見解を示した。同地区連銀総裁は今年FOMCでの投票権はないが、従来は金融引き締めに消極的とされていた。それが年内毎会合での利上げの可能性まで言及したことは、FRBがインフレ高進に対して、市場参加者の想定以上に警戒姿勢にあることを示唆している。

*1:PRESTIA Insight 2022.03.03_「米国:インフレ高止まりを警戒し、金融引き締めへ」

TOP