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J-REIT:価格調整圧力は残るものの、割高感は和らぐ

2022-03-07

■ 東証REIT指数は価格調整を経て、割高感は和らぐ

■ 賃料下落は続いているが、J-REITは安定的にインフレを上回る利回りが期待でき、検討の余地も


   筆者が半期ごとに定点観測している国内不動産投資信託(J-REIT)と国内不動産市場の動向をまとめる。前回の昨年8月末時点では、代表的なJ-REIT指数である東証REIT指数は一時的な調整にとどまらず、下降基調への転換である可能性を指摘した*1。その後、東証REIT指数は賃料下落などのファンダメンタルズ悪化に収束する形で下落が続いている。

   この間、国内では新型コロナワクチン接種が進展し、昨年9月ごろより経済活動再開への機運が高まったが、昨年末以降、新型コロナウイルスオミクロン株感染が急拡大し、不動産の稼働率、賃料ともに低迷が続いている。リモートワーク普及、観光需要減少に伴い、特にオフィス、宿泊施設への影響が大きく、オフィスでは、東京(1月空室率:6.26%、平均賃料:前年比6.1%減)を中心に空室率上昇・賃料減少基調が継続。宿泊施設では、客室稼働率(1月:33.9%)の回復は鈍く、全国消費者物価指数の宿泊料(1月:前年比0.6%上昇、前々年比1.3%下落)もコロナ禍以前の水準を大幅に下回っている。

   東証REIT指数は半年超の価格調整を経て、リスクプレミアムを示すイールドスプレッド(分配金利回り-10年国債利回り)は約1年ぶりの水準となる約3.7%超まで拡大し、割高感は和らいでいる。半面、短期的にはさらなる賃料下落が見通されており、価格調整圧力が残存している状況は変わらない。加えて、金融緩和の長期化観測は半年前より後退しており、10年国債利回りの上昇圧力が強まりつつある点は、従前より注意が求められるようになった。

   外部環境に目を転じると、世界的に物価高騰が続き、資産運用でもインフレ対応が課題となっている。REITは比較的安定したインカム収入とインフレヘッジが期待できる資産クラスとして、商品特性に関する魅力は相対的に高まっている。米国では、物価上昇に連動して不動産賃料の上昇が確認されており*2、REITはインフレヘッジの一定の役割を果たしている。日本では、上記の通り、オフィス、宿泊施設などで賃料下落圧力に晒されており、インフレヘッジには寄与していないものの、分配金利回りは足元のインフレ率を上回り、実質利回りはプラスで推移している。物価連動国債利回りがマイナスで推移するなか、J-REITは代替運用として一考の余地がある対象と考えている。

*1 PRESTIA Insight 2021.08.27「J-REIT:上昇局面からの基調転換の可能性も」
*2米生産者物価指数のオフィスビル賃料、商業用不動産賃料、工業用不動産賃料、消費者物価指数の主要住居賃料などが上昇している
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