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ドル高を凌駕するユーロ安への懸念

2022-03-03

■ ロシアのウクライナ侵攻で、為替市場ではドルインデックスが急騰し高止まりの様相

■ ロシア向け欧州金融機関の与信は相対的に大きいが、金融システム不安に陥る可能性は低い


   ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて6日が経過した。首都キエフの陥落は目前に迫りつつあるも、ウクライナ軍は欧米諸国の援護射撃なく善戦していると伝えられている。欧米諸国は即時軍事介入に消極的だが、26日に一部の露銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することで合意した。プーチン露大統領は露軍の核抑止部隊に特別警戒を命令、警戒態勢を最高水準に引き上げるなか、ウクライナと停戦合意に向けた交渉を2月28日に行った。だが、ウクライナは事実上の降伏となる「非武装化」を認めず、両国に歩み寄りの兆しはみられない。停戦交渉は平行線のままで、2日に再開されるとの報道もあるが流動的。こうしたなか、対露追加制裁を受けて、通貨スワップ市場では需給ひっ迫への警戒感からドルの調達コストが上昇。ドルインデックスは24日に97.735まで急騰し2020年6月以来の高水準を付けた後も、情勢の見極めに高止まりの様相を呈している。

   露中銀は2014年の「クリミア併合」を契機に、外貨準備を6300億ドル(GDP比40%)に積み上げたが、主要中銀による同国の外貨準備凍結によって外貨不足に陥るリスクが浮上。市場介入でルーブルを買い支えることもできず、ルーブルは対ドルで44%超急落し史上最安値を更新中だ。こうしたなかで、ロシア向けのエクスポージャーが大きいイタリアとフランスの信用リスクも懸念される。国際決済銀行(BIS)によれば、両国金融機関が保有するロシア向け与信残高は500億ドル超と外国銀行全体の40%強を占め、米国金融機関(147億ドル)を大幅に上回る(2021年9月時点)。今後、ロシア向けの不良債権が増大し、信用格付けの低いイタリアのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)はさらに上昇することが見込まれる。だが、対外債権に占める与信残高の割合は小さく、世界的に金融システムを脅かす事態には陥らないだろう。
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