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2022年3月1週目(28日~4日)の相場展望

2022-02-28

先週、ロシアはウクライナの東部にある親ロシア波である2つの週の独立を承認した。一方的な承認となりNATO側はそれに対して経済制裁を決定した。その後、ロシアはウクライナの軍施設を中心に砲撃したが、住宅地域等には被害を加えておらず部分的な侵攻を始めた。ウクライナ侵攻は実質では2014年以来となる。その報道を受けて相場は乱高下となり、金と原油価格は大幅上昇し、株価は大きく下げた。為替は円高基調となり、欧州通貨、ドルなどは対円で売られた。ロシアの株は一日で安値まで50%程度も下げた。2014年の場合は、今回と同時期に侵攻が始まり、翌2015年2月に停戦合意まで約一年間紛争が続いている。ロシアの株価は前回の侵攻時点では数パーセントの下げだったが、約一か月後には30%程下げている。今回はそれ以上の動きを一瞬で織り込みに行った感がある。以前と違う点は、株式市場の大きな背景として米国のインフレ台頭からの利上げ予想とコロナ禍ということだ。これまでの金融緩和の巻き戻しがされている中での騒乱となったことで、一時的にせよ大きな下げに見舞われている。前回侵攻した2014年は米国株への影響がほぼなかったが、今回はウクライナ情勢の影響から約7%も下げているから今回は悪影響が大きいと見られている。直近の世界の株価レベルは、各国の歴史的に類をみない金融緩和で株に資金が相当量流入していて相対的にバリュエーションが高いことが要因として上がられる。しかし、それでも市場の反応は大きすぎと考えており、ロシアの平均株価が半値になるなど誰が予想したであろうか。今後の展開は読めないが、今月半ばのFOMCまでに限定すると、一旦先週木曜日の安値を底の目安に大きなレンジ幅で徐々に収斂していくと考えている。

欧州では、世界の約4割のシェアーを持つロシアからの天然ガス供給が滞ると長期的には約15%の不足が生じるとしている。ロシア以外からの液化天然ガスを調達が可能としており当面は凌げると報道されている。しかし一年後の冬には前述の不足が生じるということとなりそうだ。この戦争で一番大きな影響を受けるのは欧州であり、今後の金融政策にも調整が必要となるだろう。市場はそれを今度徐々に織り込みにいくのではと考えている。天然ガスを放棄するような契約をロシアとするのかは疑問だが、地政学からだけではなくその他の資源価格も上がっており、欧州の経済へ与える影響は大きい。ロシアとすれば資源価格が高い今は国の利益が増加しているが、まさかモスクワの株式が半値になるとは予想できなかったであろう。今後資源に関しての交渉がどう推移するかで欧州通貨の動きは変わっていくだろう。今後、テーパリングに関するECB高官のコメントに注意する必要が出てくる。

ユーロドルは、日足ボリンジャーバンドの3αの内側での推移が続いており、明確なトレンドが出ないと3αの拡大はなかなか難しい。米国利上げやウクライナ情勢があっても安定して推移している。短期では大きく動いているように見えるが、300ポイント内での上げ下げだけでまだトレンドははっきり出ていない。しばらくはボリンジャーバンドの3αに接近したら逆張りでのポジション取りが有効であろう。一つ気を付けるとすれば、直近の安値を更新し1.1100を下回ることがあれば損失覚悟の売りがあると想定され、下値トライでストップロスのハンティングなどあり得るので加速も考えられる。その場合の逆張りだけは要注意だろう。下値の目途は大きく見積もって1.0800までの下げが想定される。上値は1.1280付近に強い抵抗がありそうだ。1.15台まで上昇しないと下値不安は無くならないだろう。

ユーロドル日足チャート


ウクライナ情勢の悪化で先行きは読みづらい展開となる中で想定されるのは、各国中銀のテーパリングや利上げ幅などへの影響で今後の焦点となりそうだ。先週の個人消費支出価格指数は、前年同月比で6.1%の上昇となって30年ぶりの高い伸びとなった。今のところ0.25%幅で利上げ予想が大勢を占める3月のFOMCが16日に控えるが、金利へのアプローチの舵取りが非常に難しくなりそう。発表後のパウエルFRB総裁の会見の内容にウクライナ情勢への考慮が入るのかどうかも注目が集まってくるはずだ。また世界各国がロシアのSWIFTの使用を大きく制限しており、送金や決済システムが不能となる。それに対してロシアは、海外投資家に自国の株の売却を認めないという反撃をしている。今週はウクライナ情勢後の動きを捉えるものに、ドイツの消費者物価指数、米国ISM製造業と非製造業景況指数やベージュブックに雇用統計の発表が控える。オーストラリアでは四半期GDPの発表があり、結果によっては同国が地政学的にウクライナ情勢に影響されにくい、また資源価格の高騰も有利にはたらく環境下であるため、テーパリングや利上げの思惑が強まる可能性が高まりそうだ。
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