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ロシア金融市場が大荒れとなった背景について

2022-02-23

■ ロシア軍のウクライナ侵攻の可能性が高まり、ロシア株価指数とルーブル相場は急落した

■ 今後は「ミンスク合意」に代わる協定案の構築に注目、市場のリスクイベントとして残るだろう


   昨日2月21日、ロシアの主要株価指数であるMOEX指数は一日で10.5%下落した。これで昨年10月14日高値からの下げ幅は29.3%に達している。また、為替市場でもロシア・ルーブルが対米ドルで80ルーブル台へ急落し、2020年11月3日以来の安値をつける場面もあった。本稿では、ロシア金融市場が急激な反応を示した背景を整理したい。

   直接のきっかけは、プーチン露大統領がウクライナ東部にある「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(以下、両共和国)の独立を認める法令に署名したことだ(ウクライナ政府は、両共和国を反政府組織と認識している)。加えて、同大統領はこれら地域に「平和維持軍」を派遣するよう、露国防省に指示した。その結果、ロシア軍によるウクライナ侵攻の可能性が高まったことが欧米英を刺激し、ウクライナ情勢の緊迫感を一段と高めた。米仏英は国連安全保障理事会の臨時会合の開催を要請し、22日日本時間午前11時から開催される。また、欧州連合(EU)は欧州委員長と欧州大統領が共同声明を発表し、対ロシアの制裁パッケージを協議する予定。米国ではバイデン大統領がウクライナ東部地域への米国民による新たな投資等を禁じる大統領令を発令するなど、制裁の度合いを強めるとみられる。

   今後の注目点は、2014年と2015年に締結された「ミンスク合意(以下、同合意)*1」に代わる協定案の構築とみている。同合意は100%履行されていなかったが、今回のロシアの行動で事実上消滅したとされる。これまでEUは、同合意に沿って米国、ウクライナとロシアの仲介を行っていたため、早急に新たな妥協案を構築する必要がある。金融市場の反応は2月18日発行のPRESTIA Insight*2に沿った流れになると予想するが、混乱が東欧地域にとどまるか、世界市場にまで拡大するかは不透明といえる。引き続き、金融市場のリスクイベントとして、関連報道に注目が必要だろう。

*1:ウクライナ東部における紛争停戦のための協定、2014年はロシア・ウクライナ・両共和国が締結
2015年は欧州安全保障協力機構(OSCE)監督の下、ロシア・ウクライナ・仏・独が締結
*2:PRESTIA Insight 2022.02.18_「地政学リスク:金融市場への影響を整理する」
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