中国経済:景気減速感が強まり、金融緩和が進む
2022-02-22
■ 中国は1月に景気拡大ペースが一段と鈍化した模様
■ 当面は経済の安定に向けて、構造改革よりも財政・金融政策による景気下支えが優先されそうだ
中国では、1、2月は春節休暇により祝日の日数が前年と大きく異なるため、多くの経済指標が3月にまとめて公表される。今月公表された一部の経済指標をみる限り、中国経済は、1月に景気拡大ペースが一段と鈍化したことが示唆される。景気減速を端的に示しているのはPMIである。1月は製造業(政府:50.1、前月比0.2ポイント低下、民間:49.1、同1.8ポイント低下)、非製造業(政府:51.1、同1.6ポイント低下、民間*1:51.4、同1.7ポイント低下)ともに低下し、製造業の民間公表値は、活動の拡大、縮小の基準となる50を下回った。湖北省武漢市で都市封鎖が実施された直後の2020年2月以来の低水準となり、製造業の活動が落ち込んだことがうかがえる。また、非製造業では、政府公表値、民間公表値ともに大幅低下し、サービス消費などの内需低迷も示唆される。北京五輪開幕を控えて、新型コロナウイルスオミクロン株の感染拡大に対して厳格な行動制限を導入した影響が表れたとみられる。
一方、金融統計をみると、マネタリーベース(前年比18.5%増)が急増している。金融市場の資金需給が逼迫する春節休暇前に中国人民銀行が流動性供給を控えた前年の反動が表れたことに加えて、景気減速に対応して流動性供給を大幅に増加させたことがうかがえる。市中の貨幣流通量を示すマネーサプライ(M2、同9.8%増)、社会融資総量残高(同10.5%増)の増勢も加速した。中国人民銀行が市中銀行に対して融資促進の窓口指導を行ったことも伝えられており、金融機関の融資姿勢が積極化しつつある。また、最優遇貸出金利(LPR)が1月まで2カ月連続で引き下げられ*2、2月8日には保障性賃貸住宅建設向け融資を不動産業向け融資総量規制の対象外とするなど、中国政府が目指す経済の安定に向けて金融面での支援を一段と強めている。
3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代)では、2022年の成長率目標が前年の「6%以上」から5%台へ引き下げられ、格差是正などの構造問題とともに、景気のソフトランディングを目指すことが想定される。秋には中国共産党全国代表大会の開催を控えており、経済の安定に向けて、当面は、昨年後半に進められた構造改革よりも財政・金融政策による景気下支えが優先されそうである。