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地政学リスク:金融市場への影響を整理する

2022-02-21

■ 世界経済の下振れと資源価格上昇への連想が働きやすい

■ 米金融引き締めへの思惑も絡み、株安の勢いが増し、国債利回り低下圧力は軽減か


   金融市場ではウクライナ情勢を巡る地政学リスクへの警戒感が高まっている。バイデン米大統領は17日、ロシアがウクライナに侵攻する可能性は非常に高いなどと発言したほか、ブリンケン米国務長官は同日、国連安全保障理事会での演説でロシアは攻撃のための口実づくりを計画していると訴えている。ロシア側の情報発信は限定的だが、金融市場では軍事衝突への懸念が強まっている。

   欧米とロシアが関わる地政学リスクは以下のふたつの連想を引き起こす。ひとつは、世界経済の下振れである。軍事衝突による物理的な被害が発生しなくても、貿易活動の停滞を招き景気が下押しされるとの懸念が高まる。もうひとつは資源価格の上昇である。ロシアは世界第2位の原油・天然ガス生産量を誇り(2020年、BP)、同国の供給減への連想から原油・天然ガス価格には上昇圧力がかかりやすくなる。資源価格の上昇はコスト上昇を通じて景気悪化要因となりうる。今般の地政学リスクに対する市場の警戒感を計るうえで、原油先物価格(WTI)の動向には注目しておきたい。

   こうした連想が働くと、一般的に金融市場は株安、国債利回り低下で反応する。また、現在の米連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制姿勢を鮮明にしており、資源価格の高止まりが長期化するとの思惑から期待インフレが高まるリスクの芽を摘むため、金融引き締めを進めざるを得ない。地政学リスクへの警戒感が長期化するほど、米国の金融引き締めへの思惑が絡み合い、株安の勢いは増幅され、国債利回りへの低下圧力は軽減されると整理しておきたい。なお為替市場では、リスク回避姿勢が強まるほど円買いが勢いを増すものの、同時にドル買いも入るほか、金融引き締めへの思惑もドル高要因となろう。そのため、ドル円の下振れ幅は限定的なものにとどまると思われる。
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