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ECBはFRBと同じように政策方針を急旋回するのか

2022-02-10

■ FRBに続き、ECBも金融引き締めへの政策姿勢転換を明確にした

■ ECBは現時点では漸進的な引き締めを志向しており、FRBとの乖離は続きそうである


   米連邦準備理事会(FRB)に続き、欧州中銀(ECB)も従来の金融政策姿勢を見直し、引き締めに向けて検討が進められる。FRBの政策方針との共通点、相違点を整理し、今後のECBの金融政策の論点を確認する。
   3日のECB理事会およびラガルド総裁の会見のポイントは主に次のような点である。(1)「インフレ率は従来の見通しよりも長い間高止まりしている」と物価認識を一段と引き上げた点。2022年末まで2%を上回る水準が続くと見通す一方、「今年中に低下する」という見解は据え置かれた。(2)前回まで主張していた「金融緩和が依然として必要とされている」という評価が撤回され、「中期的な2%の目標で物価を安定させるために政策を適切に調整する準備がある」と明言された点。声明文からは政策調整に関して「どちらかの方向に(in either direction)」という文言が削除され、引き締めへの政策転換であることを明確にした。(3)フォワードガイダンス自体は維持され、資産購入プログラム(APP)終了後に利上げに着手するという従来の順序が強調された点。資産購入の段階的縮小(テーパリング)完了後に利上げを進めるFRBと同じような政策正常化プロセスが想定されている。(4)今後の政策判断はデータに基づいて慎重に評価していく点。FRB同様、政策の柔軟性を確保し、3月のECB理事会で更新されるスタッフマクロ経済見通しなどを踏まえて詳細を改めて検討する模様である。


    これらは、昨年11月30日に高インフレが一過性の現象であるとする従来の見解を撤回し、金融引き締めへと政策方針を急旋回したFRBと重なる。金融市場でも、このような連想が働き、ECBの年内の大幅利上げを織り込み始めている。ただし、現時点では、ECBは漸進的な引き締めを強調しており、FRBのようにインフレ抑制を目指して引き締めを加速していくことまでは明示していない。ラガルドECB総裁は7日の欧州議会経済金融委員会での公聴会でも上記の趣旨を繰り返し、市場の過度な織り込みにブレーキをかけている点は、それを容認するFRBとは異なる。フォワードガイダンスの修正やAPPの終了前倒しなど、ECBが引き締め姿勢を一段と強めない限り、政策正常化までの時間軸は短縮化せず、米欧間の金融引き締めペースは乖離していく可能性の方が高そうである。
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