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米雇用統計レビュー:良好な結果だが、注目度は低下へ

2022-02-08

■ 1月の米雇用統計は良好な結果と市場では解釈され、米金利上昇と米ドル高で反応した

■ FRB高官の発言を踏まえると、今後は物価指標への相対的な注目度が高まると推測する


   2月4日に米労働省が発表した1月の米雇用統計は、米連邦準備理事会(FRB)による3月利上げ開始へ一歩近づく良好な結果となった。失業率は4.0%と前月(3.9%)から小幅上昇したが、完全雇用とみなされる4.0%付近にとどまった。また、平均賃金は前年比5.7%増と前月(同5.0%増へ上方改定)から一段と伸びが加速した。こうした結果を受けて米金利は上昇し、為替市場では米ドル高の流れに。ただし、単月の雇用統計だけでは、FRBが3月に0.5%ポイントの利上げ実施観測にはつながらないとみている。むしろ、10日に発表される1月の米消費者物価指数(CPI)の結果次第で、3月の大幅利上げ観測が改めて高まる可能性がある。

   そうしたなか、非農業部門雇用者数(以下、NFP)について、今回は結果への解釈を保留とした方が良いと考える。約2年間続く新型コロナウイルス禍の影響から、季節調整自体に歪みが生じていることは従来から指摘されている。前月比46.7万人増と市場予想(同15万人増)を大きく上回ったが、これは季節調整済の数値であり、季節調整前の数値では一転、同292.4万人減と大幅に減少した。ただ、この数値も鵜呑みにできない。通常、病気などで欠勤した労働者はNFPでカウントせず、米労働省の試算では今回の集計期間中に約361万人が欠勤扱いだったと報じられている。いわば、今回のNFPは不確定要素が多すぎたと言えよう。

   年明け以降のFRB高官発言を整理すると、「年内の利上げ回数を決定するのは、インフレ動向次第」との見解で概ね一致している。加えて、パウエルFRB議長は1月米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「労働市場環境が最大限の雇用と合致していると、FOMC参加者の大多数は(自身を含めて)一致」と認めた。こうした発言は、FRBが責務とする「物価と雇用の安定」のうち、直近では「物価安定」に比重を置いていることを示す。当面の間は、CPIや個人消費支出(PCE)価格指数といった物価指標への注目度が相対的に高まると推測する。したがって、雇用統計の中では、NFPの不確定要素の多さも相まって、物価上昇につながる要因でもある平均賃金への注目度が高まろう。
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