ECB理事会レビュー:金融引き締めに向けて
2022-02-07
■ ラガルドECB総裁は、3月理事会で現行政策を再検討する考え、年内の利上げを否定せず
■ 3月理事会では、ECBスタッフの物価見通し引き上げとフォワードガイダンス達成を確認か
欧州中銀(ECB)は3日の理事会で主要政策金利を据え置いた。資産購入プログラム(APP)は4-6月期に月400億ユーロ、7-9月期は同300億ユーロ、10月以降は同200億ユーロのペースで減額し、利上げは資産購入終了後に開始するとした。物価上昇は年内に緩和するとして従前の見通しが繰り返されたが、1月のユーロ圏消費者物価指数(HICP、速報値)上昇率は前年比5.1%と、エネルギー価格急騰や輸送コスト増に伴う食品価格上昇を背景に統計開始以来の伸びを記録した。少数派は資産購入縮小の加速を求めたと伝えられるなか、ラガルドECB総裁は、依然として中長期のインフレ期待は物価目標と整合的と指摘したものの、昨年12月時点のECB予測と比べてインフレ見通しに対する短期的な上振れリスクがあると述べた。そのうえで、新たに入手される経済情報が政策行動を正当化するとして、3月の理事会で評価する考えを示した。
3月10日の次回理事会では、四半期毎のECBスタッフによる経済・物価見通しが公表される。2022年の実質GDP成長率見通しは昨年12月時点(4.2%)から下方修正される可能性もあるが、1%台前半とされるユーロ圏の潜在成長率を優に超える。また、HICP上昇率は3.2%から上方修正される公算は大きく、ECBの先行きの政策指針であるフォワードガイダンス(①見通し期間の中頃でインフレ見通しが2%に到達、②その後も見通し期間終了まで安定的に2%で推移、③足元のインフレ基調が2%の達成にあわせて進展)が年内に達成されるとの見方は強まるだろう。市場では早ければ6月の利上げ、年内に計40bps(0.4%)の利上げ幅を織り込み始めており、ユーロ圏の国債利回りは幅広く上昇。ユーロは底入れ感を強めているが、3月の米利上げ開始が既定路線となるなか、心理的節目の1.15ドルを明確に超えるユーロ高・ドル安の基調に転じるか注目される。