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日銀の緩和姿勢を巡り、黒田総裁へ注目が集まる

2022-02-04

■ 日本10年国債利回りにも上昇圧力がかかっているが、日銀は金融緩和姿勢を崩していない

■ 今年下期以降のリスクとして、日銀の政策姿勢修正は為替相場見通しに直結する材料と警戒


日本10年国債利回りは、1月31日に2016年1月以来の高水準となる0.185%を付けた。3月以降、米連邦準備理事会(FRB)は利上げサイクルを復活させることが濃厚となったほか、昨年12月に利上げを実施した英国や3月の利上げ実施が市場に織り込まれたカナダなど、主要先進国では金融引き締めの流れが強まりつつある。それら海外情勢を受けた日銀の金融政策姿勢に対する修正の思惑が、こうした円債市場の動きにつながっていると認識している。

直接、日銀の緩和修正への懸念を強めたのは、国内企業物価指数の上昇とみている。2021年の同指数は前年比4.8%上昇と、1981年以来で最大の伸び率を記録。主に資源価格高が寄与したが、徐々に川下の消費者物価指数へ波及するとの懸念につながった。また、海外からの観測報道も加わっている。1月27日に国際通貨基金(IMF)のアジア太平洋局・副局長は、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の一部修正を提言した。

しかしながら、黒田日銀総裁は緩和継続の姿勢を崩していない。1月17、18日の金融政策決定会合後の記者会見で、同総裁は「現在の金融緩和を修正する必要は全くない」と市場の思惑を否定。また、1月28日の衆院予算委員会で、YCC政策の修正検討は現時点で時期尚早と述べている。加えて、「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)内の物価見通しで日銀は、2023年度までの消費者物価指数(除く生鮮食品)上昇率見通しの引き上げを、目標とする前年比2%未満(2023年見通し:同1.1%)にとどめた。以上から、仮に日本10年国債利回りが一段と上昇した場合でも、昨年3月に日銀が明確化した「ゼロ%を中心にプラスマイナス0.25%程度」の水準は死守されよう。

今後は、来年4月に任期満了を迎える黒田総裁の後任人事を巡る話題に注目が集まるだろう。金融市場では、同総裁が再任される可能性は低いとみられている。現在の異次元緩和を推進してきた総裁が交代となると、日銀の金融政策が修正されるとの思惑につながる恐れもある。今のところ、そうした懸念が強まるとすれば同総裁の任期満了が近づく今年下期以降とみているが、特に為替相場の見通しにおいて、「日銀の金融緩和継続=円安要因」の見方に直結する相場材料のため、警戒が必要な話題と考える。
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